震災の教訓継承へ遺構巡る 地元児童が旧気仙中見学(別写真あり)

▲ 旧気仙中校舎を見学する児童たち

 陸前高田市気仙町の気仙小学校(佐藤健校長、児童55人)の児童が22日、地元にある東日本大震災の遺構「旧気仙中学校」校舎を見学した。同市観光物産協会のパークガイド案内のもと、10年前の「あの日」のまま時が止まった校舎内を巡り、津波の恐ろしさと防災の大切さを学んだ。同協会は今後、地域の未来を担う世代に震災の教訓を浸透させるべく、市内小中高校の児童・生徒に限り、ガイドの団体利用を無料とする。旧気仙中校舎に関する情報を載せたパンフレットも作成し、利用促進を図る。

見学者向けに作成した学習を深めるパンフレット

観光物産協会 市内小中高生の案内無料化

 

 同日は、震災を経験していない4年生10人が見学した。津波で別の場所から流れてきたとみられる大型の冷蔵庫、天井からぶら下がる制服、むき出しになった鉄筋などを見て回り、ガイドの解説を聞き熱心にメモをとっていた。
 菅野怜海さんは「津波で壊れたものが思っていた以上に多くて驚いた。地震や津波が起きたときに自分の命や家族を守れるよう、普段から声をかけるようにしたい」と話した。
 見学は同校の震災学習の一環。4年生は今月中旬、気仙町の震災津波伝承館も訪問した。担任で、旧気仙中出身の吉田正樹教諭(49)は「震災を正しく理解してもらうため子どもたちに見てもらいたいと思っていた。両親など身近な人が通った学校で、そう考えながら見学すれば、感じ方や見方も変わる。震災を人ごとでなく、自分事と捉えてほしい」と願った。
 同協会は今月初旬から、震災の教訓と同市の魅力を広く発信しようと、震災遺構を含む高田松原津波復興祈念公園内を案内するパークガイド事業の本格運用を開始。ガイドは昨年12月〜今年3月に開講した養成講座を修了した30人が担う。
 同協会によると、団体客は22日現在、修学旅行で訪れる県内小中学校を中心に、今秋まで80件合わせて約5700人の予約がある。
 所要時間は約30分〜約2時間。ガイド1人につき最大40人の案内を行う。利用料は、一般の場合20〜119人が1人1100円、120人以上が1人825円。修学旅行での利用は、小学校が1人550円で、中学・高校は一般と同じ。一般、修学旅行ともに旧気仙中校舎を見学する場合、1人500円を加算する。
 個人客向けは7月の開始を目指している。
 パンフレットはA5判フルカラーの11㌻で、3000部発行。17日から旧気仙中校舎の見学者に配布している。
 同協会は「地元の児童・生徒にガイドを通じて教訓を伝えたい。予約客との日程を調整したうえ、市内各校のニーズに合わせて案内したい」としている。
 ガイドに関する問い合わせは、同協会(℡54・5011)へ。