保全活動 次のステージへ 守る会が高田松原由来の植物育成 〝里帰り〟を見据えて(別写真あり)
令和3年6月24日付 7面
陸前高田市のNPO法人・高田松原を守る会(鈴木善久理事長)は、東日本大震災後に高田松原から保護した植物を小友町内で育て、個体を増やす活動を継続している。管理している植物は約10種類あり、将来的には〝里帰り〟させる予定。高田松原でのマツ苗植栽の取り組みが今年5月に終わり、景観再生に向けた保全活動を次のステージへと移行させている。
守る会は、任意団体だった震災前から、高田松原の環境保全に関わる活動や普及啓発事業を行っている。
平成23年3月の大津波で高田松原が壊滅的被害を受けてからは、奇跡の一本松の保護や、白砂青松の景観再生に向けた取り組みを展開。この中で、行政から許可を得たうえ、高田松原に自生する一部の植物を採って回収する活動も市民有志とともに行った。
植物の回収は、将来もとの土地に植え直すことが条件。守る会では、防潮堤や砂浜の整備など、高田地区海岸災害復旧事業にかかる各種工事完了後の移植を見据え、植物を預かり、育ててきた。
高田松原由来の植物を育てている場所は、守る会が震災後から借用している箱根山麓の民有地。ニッコウキスゲやハマナス、キショウブ、ヤブカンゾウなどが植えられている。守る会のメンバーは、植物の成長を見守りつつとれた種を植えたり、株が増えるよう草を刈って環境を整えたりと、植物の子孫を残す取り組みも行ってきた。
20日には、2カ所ある土地に植えられていた植物を管理しやすいよう1カ所に集約する作業を実施。守る会メンバーやボランティアら約10人が協力し、ネットを張って害獣対策も行うなど、植物が元気に育つよう願いを込めた。
守る会はこれまで、高田松原に整備された市の防潮林エリアにマツ苗を植え、保全にあたることが主要な活動となっていた。今年5月に目標としていた1万本の苗木植栽が完了したことから、松原再生の事業は次の段階に移行する。
小山芳弘副理事長(69)は「植栽地にマツ苗を植えて終わり、ではない。震災前のような高田松原の景観を取り戻すため、活動はこれからも続く」と先を見据える。
小友町で育てている植物について「来年までには高田松原に植えたい」と小山副理事長。県や市と相談しながら移植の時期や方法を決めたい考えで、「高田松原の景観を守り育てる活動はぜひ、市民が参加できる形をとりたい。植物を植える作業やマツの植栽地の草刈り活動など、地域で力を合わせて美しい松原を後世に残していければ」と話していた。