東日本大震災10年/「毎月1000円」コツコツと 一関市の住民有志が気仙の奨学金制度支援 節目迎え活動に終止符(別写真あり)

▲ 細川理事長に寄付金を手渡した(左から)菅原脩二さん、金野さん、小山さん、菅原幸子さん、皆川さん

 東日本大震災発生以降の10年間、気仙両市の奨学金制度などを支援しようと寄付を続けてきた一関市の住民有志「ご縁の会」は、今月で活動に区切りをつける。有志が毎月1000円を出し合い、被災地の復興と子どもたちの成長への願いを託してきた。地道で心温まる活動を重ねてきた足跡に、感謝の声が寄せられている。

 

 同会で寄付活動を続けてきた一関市の菅原脩二さん(76)・幸子さん(71)夫妻、小山哲子さん(74)、皆川長子さん(72)、金野泰子さん(71)は24日、気仙両市の教育委員会を訪問。このうち、大船渡市教委では、公益財団法人・同市育英奨学会の細川幹雄理事長に5000円を寄付した。
 懇談で脩二さんは、昭和35年のチリ地震津波発生時、中学校単位で声をかけて義援金を集め、直接届けて同市関係者から感謝されたエピソードを紹介。東日本大震災の時も「大船渡や陸前高田は、広くみれば同じ仲間。何かをしたかった」と思いを打ち明けた。
 また、脩二さんは大船渡町内などに店舗を構えていた「千葉久」で勤務していたほか、盛町在住者から茶道を学んでいた有志も。それぞれに気仙とのつながりや思い出があり、寄付後に設けられた戸田公明市長との面会でも、話に花が咲いた。5人は今後の交流継続や、さらなる復興への期待を込めていた。
 この寄付活動は、震災直後の平成23年4月、「やがて子どもたちが岩手を、東北を元気にしてくれる。その日が必ず来ることを願い一緒に行動しませんか」と呼びかける菅原さんの投稿が新聞に掲載され、賛同者が集まった。故人を含む一関市在住の7人が毎月1000円ずつを出し合い、気仙両市などに寄付を続けてきた。
 年間でまとまった額を送金するのではなく、1〜2カ月ごとに〝仕送り〟を続けることで「気持ちのつながり」を表してきた。大船渡市育英奨学会だけでも累計で33万円を超え、細川理事長は「本当に頭が下がる思い。この温かい気持ちが大船渡の子どもたちの向学心につながってくれるはず」と感謝する。
 脩二さんは「自分たちができる範囲で続けてきたことが喜ばれ、光栄。有志の中でも亡くなった方がいたり、10年続けてきたことから今回で寄付は最後とするが、これからも何らかの形で応援をしていきたい」と話している。