東日本大震災10年の節目に 陸前高田でJC岩手大会 フォーラムや追悼法要(別写真あり)

▲ パネリストによる熱弁が繰り広げられたフォーラム

課題解決への決意を新たに

 

 公益社団法人日本青年会議所・東北地区岩手ブロック協議会(八重樫利久会長)主催の「第50回岩手ブロック会員大会」は26日、陸前高田市高田町の市民文化会館・奇跡の一本松ホールで開かれた。同大会が同市で開かれたのは東日本大震災後初。世界共通の持続可能な開発目標「SDGs」や、人の交流による地域活性化をテーマにしたフォーラム、復興祈願追悼法要などを通し、参加会員らが震災10年の節目にも思いを重ね、地域課題解決に向けての決意を新たにした。

 この大会は、同協議会が毎年行う恒例行事で、昨年は新型コロナウイルスの影響により中止となったため2年ぶりの開催。開催地は県内各青年会議所(JC)の立候補制で決まり、今年は震災10年と大会50回目の節目に「感謝と希望を込めて」と、陸前高田JC(加藤隆史理事長)が主管した。
 「ニューノーマルを創出する起点となれ」と銘打たれた大会には、陸前高田JCを含む県内13JCの会員ら約200人が出席。
 開会セレモニーでは、国歌とJCソング清聴のあと、JCI(国際青年会議所)ミッションやJCIビジョンを代表会員が唱和。
 その後、八重樫会長が「自分と向き合うということは、他者にどう貢献できるかと考えること。垣根を越え、分け隔てなく人と接することが、誰も見捨てないことにつながる。きょう一日のファンクションを通じてそのことを感じてもらいたい」とあいさつ。
 次いで、森達也県沿岸広域振興局長と戸羽太市長が祝辞を述べた。
 加藤理事長は「震災後、数え切れない支援があり、新しいまちににぎわいが戻ってきた。これまで守ってきたものに加え、新たにできた魅力もある陸前高田。今回、みなさんに元気を届ける機会をいただいたことに御礼を」と感謝を語った。
 セレモニー後は、会員向けの講演が行われた。
 午後は、メーンフォーラム「BORDERLESSフォーラム・未来(あす)を変えるチカラ」を実施。同市が推進する「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」や「SDGs未来都市」の取り組みとも関連するプログラムを用意した。
 一般市民の来場もあった中、前半は、曹洞宗特派布教師で、花岩山永昌寺(北上市)の海野義範住職による基調講演が行われた。
 海野住職ははじめに、国連サミットで採択されたSDGsについて「社会の発展のために、課題をみんなで考え、2030年までに目指す目標のこと」と説明。また、仏教とSDGsとの共通点も語った。
 沿岸地域で先人からの教えとして知られる「津波てんでんこ」のことも取り上げ、「10年前のあの日、それぞれが高台や行くべき場所に逃げたから、みなさんは今こうしてここにいる。相手を思うからこそ、自分も思いを同じにすることができる。こうした考えが、持続可能な社会を実現するのでは」と訴えた。
 後半はパネルディスカッションを実施。海野住職に加え、後藤健市さん(㈱スノーピーク地方創生コンサルティング代表取締役会長)、奥野雅子さん(岩手大学人文社会学部教授)、森谷幸恵さん(県立高田高校教諭)、菊地康智さん(三陸ジンジャー代表)の5人が登壇し、トークセッションを行った。
 テーマのうち、誰一人取り残さない行動についてパネリストらは、専門分野の異なるそれぞれの立場から積極的に意見。「難しいことだが、違う感覚や情報を共有することが第一歩」「固定概念にとらわれず、本当に取り残されているのは誰なのかを考えるのが重要」と熱弁を繰り広げた。
 終わりには、屋外の広場で五葉山火縄銃鉄砲隊による演武と、県曹洞宗青年部による追悼法要を実施。法要には会員だけでなく市民らも参列し、震災犠牲者や先祖とのつながりにも思いをはせた様子だった。