越喜来でもデマンド交通 市地域公共交通会議で承認 10月から実証事業実施へ
令和3年7月1日付 1面
令和3年度第1回大船渡市地域公共交通会議(会長・金野律夫市地区公民館長、委員19人)は6月30日、盛町のカメリアホールで開かれ、三陸町越喜来地区(崎浜、下山、浪板の各地域)で本年度、市がデマンド交通実証実験を行う計画を承認した。同地区では昨年3月に路線バスが廃止され、地域住民の移動手段確保が課題に。すでに導入している日頃市地区と同様にタクシー車両を活用し、事前の申し込みを受けて自宅から乗車できる。各地域や市役所三陸支所前・三陸駅前を運行区域とし、10月からの開始を目指す。
バス路線廃止区域を補完
越喜来地区での実証事業は、市の総合交通ネットワーク計画に掲げる「地域公共交通ネットワーク再編プロジェクト」の一環。移動手段確保に向け、既存資源を生かした交通サービス構築を目指す。
同地区では昨年3月、崎浜地域から県立大船渡病院までを運行していた岩手県交通㈱のバス路線が、利用者減少や運転者不足などの理由で廃止となった。翌月以降、越喜来診療所までの患者輸送車に一般利用者も「混乗」する代替輸送で対応してきた。
昨年度の実績を見ると、同地区の一般利用は1007人で、患者利用の974人を上回った。平成28年度以降の推移では、全体利用は横ばい状況が続く半面、昨年度は特に一般利用の数が伸びており、バス路線廃止の影響がうかがえる。
デマンド交通は、利用したい人がいる時だけ、利用する場所に向けて運行するシステム。タクシーと異なり、運行時間と乗降場所を固定し、利用したい場合は事前に予約し、乗りたい時間と行きたい場所を伝える。同じ時間に同じ方向に利用したい住民が複数いれば同乗利用とし、コスト削減に努める。
実証事業の実施期間は10月1日~来年9月30日。平日の運行で、年末年始の12月29日~1月3日は運休となる。
運行区域は同地区内の崎浜に加え、バス停留所があった下山、浪板両地域も対象。利用者の自宅から各地域内までの利用や、市役所三陸支所前・三陸駅前までの移動に対応する。駅までを結ぶことで、三陸鉄道の利用促進も見据える。
利用者は事前登録を行い、乗車前日までに予約センターに申し込む。運賃は、1回当たり500円。路線バスでは、崎浜~三陸支所前間の料金は380円だったことから、住民負担に配慮した。
小学生は半額、就学前児童は無料(保護者同伴が原則)。身体障害者や知的障害者、精神障害者に対する割り引きや児童福祉法を受ける対象者は、それぞれ5割引きを適用する。
運行ダイヤは、崎浜発が午前6時30分、同8時30分、同9時30分。三陸支所・三陸駅発は午前11時と午後4時、同7時。三陸駅に発着する列車ダイヤにも対応しており、市では「これまで患者輸送車は午前中のみの運行だった。デマンド交通では午前中に自宅を出て、用事をすませて帰宅するまでの移動に配慮した」と説明する。
交通会議の協議では、計画案を原案通り承認。市では申請手続きを経て、9月に地域説明会を行い、10月の事業開始を見込む。これに伴い、崎浜における患者輸送便の一般利用のあり方を見直すことにしている。
市内では27年度から、日頃市地区でデマンド交通の実証事業を実施している。日頃市町から同町、盛町、大船渡町方面に向かう便(日頃市発)と、各町から日頃市町に行く便(日頃市着)がある。
「自動車免許を返納した」「知人からこの制度を教えられた」といった住民が続々と申請し、毎年、新規の申し込みが入る。延べ利用者は、1年を通した運行となった28年以降は500人前後で推移していたが、令和2年度は約800人にまで伸びた。
協議ではこのほか、本年度の事業計画と収入支出予算も原案通り決定。4年度から5年間を期間とする市地域公共交通計画の策定に取り組む方針も確認した。