地域特性生かした復興を 気仙の5人が出席 知事囲み県政懇談会(別写真あり)
令和3年7月10日付 1面
三陸のより良い復興の実現に向け、達増拓也知事がさまざまな分野で取り組む人々と意見を交換する県政懇談会「いわて幸せ作戦会議in陸前高田」は9日、陸前高田市高田町の市コミュニティホールで開かれた。それぞれの知識、経験をもとに地域振興に携わる気仙の5人が出席し、地域特性を生かした東日本大震災からの復興のあり方などについて達増知事と意見を交わした。
2年ぶりとなった気仙での懇談会には、同市から陸前高田ほんまる㈱デザイナーの種坂奈保子さんと、陸前高田食と農の森会長を務めるマツダファームの松田俊一さん、大船渡市から一般社団法人同市観光物産協会の中野貴之さんと、㈱地域活性化総合研究所地域コンサルタントの佐藤瑠奈さん、住田町から合同会社HUB代表の菊池顕さんが出席。県からは達増知事、政策企画部の石川義晃部長、沿岸広域振興局の大久保義人副局長が臨み、地元選出の佐々木茂光、千葉盛両県議が傍聴した。
達増知事は「それぞれの地域や分野で活躍する方々の声を、県政に反映させていきたい」とあいさつ。出席者の自己紹介に続き、「気仙地域の特性を生かしたなりわいの再生」をテーマに復興のあり方を話し合った。
種坂さんは、震災後に愛知県から陸前高田に移住。現在はまちづくり会社で、高田町の新たな中心市街地における事業者のPR活動などに取り組んでいる。こうした仕事内容に触れながら、「新しい市街地が市民にとって大切な場所となり、いかに居場所としていけるかに注力したい」と語った。
故郷にUターンし、農業者としてイチゴを生産する松田さんは、農業を取り巻く課題を挙げながら、地域が持つ農業人口の増加、新たな特産品を生み出せる可能性を示唆。「今後の陸前高田の発展のために、何ができるかを考えたい」と述べた。
中野さんは、青森県八戸市から福島県相馬市までの沿岸部に設定されている長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」を紹介。その魅力を「震災の記憶を語り継ぎ、地域住民と交流が図られ、美しい自然、文化、歴史を再確認できる」とし、「トレイルを活用してお客さんを呼ぶ仕組みをつくりたい」と目標も掲げた。
佐藤さんは、若者の地元定着の難しさに触れながら、同研究所が取り組むITを活用した新たな人材育成事業を説明。フードロスの削減に向けた活動も行っているとし、「地域課題を拾い上げ、民間企業だからこそできることを、行政などと連携して取り組んでいきたい」と力を込めた。
住田町産の鶏肉・豚肉を利用した独自のから揚げを提供し、特産食材をPRする「住田からあげ大作戦」の話題を提供したのは、菊池さん。その成果を示したうえで、「現在は新型コロナウイルス感染症が飲食店に影響を及ぼしている。県が飲食店を対象としたコンクールのようなものを行えば、店を知ってもらう機会が増え、経済にも効果をもたらすのでは」と提案した。
達増知事は一人一人の活動内容に理解を示し、最後に「今回は異業種での集まりとなったが、これで終わりではなく、一緒に仕事をする機会ができるよう期待したい。地域振興や産業振興は、人が中心になる。県としても携わる人たちを応援し、アイデアを実現させていきたい」と所感を述べた。