2021住田町長選にみる町政課題㊤/止まらぬ少子高齢化 基幹産業の農林業振興は?

 任期満了に伴う住田町長選は13日(火)の告示まであと3日となった。現時点で立候補を表明しているのは、1期目の現職・神田謙一氏(62)=下有住=のみ。ほかに動きはなく、神田氏の無投票再選が確実視されている。告示を前に、町政が直面する課題を探った。(清水辰彦)


■財政
 住田町の令和3年度一般会計予算は48億5000万円で、前年度より1億5000万円減少した。歳入をみると、地方交付税など依存財源が33億4292万円と、全体の68・9%を占める。
 6月末時点での町の総人口は5116人。毎年約100人ペースで減り続けており、5000人を割ろうとしている。納税力のある生産年齢人口は減少の一途をたどっていることから町税などの自主財源の伸びは期待できず、今後、町財政が厳しさを増していくことは必至だ。
 近年の財政状況の特徴としては、施設整備に伴う公債費の高止まりと老朽施設の維持補修費等の増加が挙げられている。
 令和3年度予算は、公共施設などハード面への予算配分を最小限に抑え、仮設住宅撤去後にコワーキングスペース、オンラインを利用したイベントスペース、スタディースペースを整備する「仕事・学びの場創出」、地域おこし協力隊の新規設置、住田高校魅力化構想の策定などを盛り込んでおり、ソフト事業に注力していくという考えがうかがえる。
 地域づくりや人づくり、まちおこし、教育分野などのソフト事業においては、地域住民の参加や協力は欠かせず、町としてのリーダーシップや調整力の発揮が必要だ。持続可能なまちづくりに向け、限られた財源を有効に活用し、課題解決に向け一丸となって行財政運営に努めていくことが求められる。
■少子高齢化

 町では、国のまち・ひと・しごと創生長期ビジョンを踏まえ、平成28年度に人口ビジョン、住田町総合戦略、住田町総合計画を策定。人口ビジョンにおいて2040年の人口目標を4000人として各種施策に取り組んできたが、町の人口はこれを上回るペースで減少を続けている。
 婚姻数や合計特殊出生率はほぼ目標どおりに推移しているものの、出生数や社会増減などが目標に達していないことが要因とみられる。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2045年の住田町の人口は2730人、高齢化率は56・7%にも及ぶと予測。人口減少、高齢化の流れが続くことによって経済活動が縮小し、それに伴う雇用の減少によって人口減がさらに加速する恐れもある。
 人口減少が避けられぬ中で重要となってくるのは、交流人口や移住・定住の促進。町では、これまでに増加している空き家を活用した定住促進の取り組みや、関係人口創出事業を展開している。
 「関係人口」は、都市部から移住した定住人口や観光で訪れた交流人口にとどまらず、都市部などに生活や仕事の拠点を置きながら他地域にかかわる人材として注目を集めている。人口が減り、若年層の流出や担い手不足が深刻化する中で、関係人口とのつながりは地域振興・活性化の鍵となることから、多様な交流機会創出が今後の町政発展には欠かせない。
■農林業

 町が平成29年に策定した第6次農業基本計画をみると、同町の人口は昭和55年には9000人を超えていたが、以降30年間で約3000人が減少して平成27年には6023人となった。
 人口減少により、農家人口(農家の世帯員)も大きく減少。昭和55年に6044人だった農家人口は、平成27年には1267人にまで減った。農業就業者も昭和55年は2187人で人口全体の24%を占めていたが、平成27年には549人と9・1%にまで低下している。
 町では新規就農者育成支援を図り、担い手確保に努めているが、若年人口の減少が進行し、担い手不足と高齢化が深刻化。同町のような中山間地域には耕作面積の小ささ、ほ場の点在、高い高齢化率といった課題が共通し、それらが担い手不足に拍車をかけている状態。農業経営の安定化と生産力の維持を図るための経営支援、生産基盤の整備を進めるとともに、農業者や経営体の確保・育成も急がれる。
 一方の林業。同町の森林面積はおよそ3万㌶で総面積の約9割を占め、スギ林を主体とした県内有数の林業地域となっている。
 林家(保有山林面積が1㌶以上の世帯)数と保有山林面積は、平成22年に739戸、4905㌶だったが、27年には703戸、4608㌶にまで減少。同様に林業経営体数も減少傾向が続き、22年の262経営体から27年には100経営体と大幅に減少した。
 林業従事者の高齢化も進む中、林業振興のためには労働力の確保が急務だ。新規就業者の確保・定着、自伐型林家の育成など、多様な視点での担い手確保対策を講じる必要がある。