『けせんシネマ』の制作進む 昭和の気仙が題材の映画 大船渡高生が今秋の完成を目指す

▲ 8㍉フィルムの提供者㊧にインタビューを行う大船渡高生

作中のBGMには大船渡東高太鼓部の演奏を使用する[/caption]

 映画制作の取り組みは、気仙3市町の昭和時代を映画として残し、発信することで、地元の歴史や伝統文化を知るきっかけにつなげようとスタート。映画は地域住民から募った8㍉フィルムの映像と、提供者へのインタビューの2パートで構成し、その映像の背景では気仙地区ならではのBGMを流す。
 生徒たちが、市の広報を活用するなどして先月中旬までフィルムの提供を呼びかけたところ、約100本のフィルムが寄せられた。フィルムに残された映像を復元し、生徒たちが気になったシーンの映像を選定したのち、提供者へのインタビューを行った。
 インタビューは12、13の両日、同校で実施。今作の監修を担う映像作家・三好大輔さん(49)=長野県松本市=もリモートで同席し、復元された映像を見ながら、提供者に対して2人の生徒が、いつ、どこで、何の場面を撮影したものかや写っている人、映像に関するエピソードを詳細に聞き取った。
 映像は、家族団らんの様子や地域の祭事、かつての自然風景を収めたものと幅広く、生徒たちは関心深げに視聴。当時の様子を事細かに聞き、メモした。
 インタビューを行った制作メンバーの鈴木千寛さんは「フィルムを提供してくださった方の『懐かしい』という感想がうれしかった。震災前のまちを思い出すきっかけになるような映画にしたい」と願いを込めた。
 自宅にあった8㍉フィルムを20本ほど提供した菊池平八郎さん(86)=末崎町=は「懐かしい映像ばかりで、撮っていてよかったと思った。(地域映画制作は)素晴らしい企画。若い人たちにとっては、昔の雰囲気を知ることができるいい機会になるのでは」と期待を寄せた。
 作中でBGMとして使用する大船渡東高太鼓部の演奏収録は、盛町のリアスホールを使用し、同部の1〜3年生10人が『長安寺ばやし』や『気仙甚句』、小太鼓、中太鼓ソロ演奏の4曲を演奏。入念なリハーサルのあと、発表会さながらの雰囲気で太鼓を打ち、壮大な音をとどろかせた。
 木村爽太郎部長(3年)は「自分たちの演奏を使ってもらえることはうれしい。演奏した曲を知っている地域の方も多いと思うので、映像だけでなく、音楽でも昔を思い出してもらいたい」と話していた。
 大船渡高の生徒たちはインタビューなどを続けながら、映像の編集作業も進める予定。