気仙川水系 全体で治水対策推進 県と関係機関が水害軽減に向けて協議会設置 プロジェクト素案示す
令和3年7月21日付 1面

県は20日、気仙川水系流域にある陸前高田市や住田町、国などの関係機関と協働し、「気仙川水系流域治水協議会」を設立した。近年、激甚化、頻発化する水害に備え、気仙川流域全体でその軽減に向けた治水対策(流域治水)を計画的に推進しようと設置。同日、同市コミュニティホールで開かれた協議会で規約などを決めたほか、関係機関の治水対策やロードマップを盛り込んだ「気仙川水系流域治水プロジェクト」の素案について出席者らが意見を交換した。同プロジェクトは次回の協議会で最終案について話し合い、8月末までの策定を見込む。
近年、国内では大雨や台風による激甚な水害が頻発。今後は気候変動による降雨量の増大が予測されるなど、水災害のリスクは大きくなっている。
国土交通省は昨年7月、こうした状況を踏まえて「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」を公表。その主要施策では「『流域治水(河川管理者が主体となって行うものに加え、河川流域全体のあらゆる関係者が協働して水害を軽減させる治水対策)』への転換を推進し、防災・減災が主流となる社会の実現を目指す」との方針を示した。
県は国の動きを受け、昨年度から主な河川の流域自治体や国の関係機関などとともに「流域治水協議会」を設置。これまでに1級水系の北上川と馬淵川、2級水系の小本川に協議会を設け、流域治水プロジェクトを策定。現在は、気仙川を含む2級水系4水系での協議会設置、プロジェクト策定に向けた取り組みを進めている。
住田町から陸前高田市を流れる気仙川は、河川断面が狭小で安全度が低く、昭和56年、平成11年と14年には豪雨による洪水が発生。流域に大きな被害をもたらした。
県は氾濫を防ぐための河川改修を行っているほか、両市町も洪水・土砂災害ハザードマップの作成や避難訓練といった各種対策を進めている。
協議会は、県、陸前高田市、住田町、林野庁、国立研究開発法人森林研究・整備機構の関係者12人で構成。初回の会議には代理を含む全員と、オブザーバーの国交省東北地方整備局河川部地域河川課職員が出席した。
主催者を代表し、県大船渡土木センターの馬場聡所長が「それぞれの関係者が実施する治水対策を共有し、少しでも水害を軽減していきたい。活発な意見をたまわりたい」とあいさつした。
協議では、県県土整備部が流域治水による治水対策や県内の動きを説明し、東北地方整備局河川部が治水対策に関する国の支援メニューなどの情報を提供。協議会の規約も原案通り確認した。
続いて、県が「気仙川水系流域治水プロジェクト」のたたき台を示し、出席者らが意見交換を行った。
素案では、流域治水の概要として「気仙川における河道掘削や堤防・護岸整備および橋りょう架け替えにより、平成14年豪雨と同規模の洪水を安全に流すとともに、流域における砂防施設、治山施設、森林整備、道路の整備や避難のためのソフト対策に取り組み、流域が一体となり浸水被害の軽減を図る」と記載。
▽氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策▽被害の軽減、早期復旧・復興のための対策▽被害対象を減少させるための対策──と大きく三つの目的に分け、構成機関が取り組むハード、ソフトそれぞれの具体的な対策内容を示している。
これら対策内容の実施時期はロードマップにまとめ、20~30年にわたる中長期までを見据えた流域治水の推進を図る。
関係機関が全体でハード、ソフトそれぞれの治水対策を共有しながら取り組むことで、「浸水被害の解消」と「逃げ遅れゼロ」を目指すとしている。
素案に対し、出席者からは「住民に分かりやすく提示する目的もある。どう公表するかの検討も進めてほしい」などの意見が寄せられた。次回協議会では、プロジェクトの策定に向けた最終案の確認を予定している。