東日本大震災10年/今泉天満宮が〝復活〟 社殿再建し「遷座祭」 9月に例祭も(別写真あり)
令和3年7月24日付 5面
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東日本大震災の津波で全壊した陸前高田市気仙町の今泉天満宮(荒木眞幸宮司)の再建に伴う「遷座祭」は23日、現地で行われた。本殿と拝殿が6月に竣工し、この日、正式に神社としての〝復活〟を果たした。被災者らの移転によって今泉地区住民の数が大幅に減少した中、9月には再建後初めての例祭が行われる予定で、関係者らは「多くの人が神社に集うきっかけとなれば」と期待を込める。
ご神体は大津波の被害を受け現在も修復中だが、この日は今泉天満宮と合殿になっている八坂神社の例祭日であったことから、これに合わせて遷座祭を実施。禰宜(ねぎ)の榊原裕一さん(38)を祭主に、拝殿で神事が挙行された。
同天満宮は大津波で全壊。一対のこま犬と、境内にあった「天神大杉」と呼ばれる樹齢800年の御神木は残ったが、津波に耐えた大杉もその後に枯死。津波遡上(そじょう)高(根元から約4・5㍍)まで伐採されたものの、同宮のシンボルとして、また津波の脅威を伝える〝語り部〟として、今もその威容を誇る。
新たな社殿は、東京都の㈱日本建築工藝設計事務所が設計。文化財建造物木工主任技能者の資格を持ち、「現代の名工」として厚生労働大臣表彰を受けた菊池恭二氏が代表を務める遠野市の社寺工舎が施工した。建設地は旧社殿跡で、昨年3月に地鎮祭、10月に上棟式が行われた。本殿前には、平成28年に三笠宮家の彬子さまが同宮を訪問されたことを記す碑も建立された。
境内は、「神社の歴史を守りたい」とする荒木宮司(78)らが自治体などと交渉を重ね、市の復興土地区画整理事業区域対象外に。地区内でもかさ上げされていないほぼ唯一の場所となり、震災前の今泉の名残を辛うじてとどめる。
荒木宮司は「いわばこれで〝新装開店〟となり、普通の神社として活動できるようになった。拝殿も毎日開けるので、お参りに来てほしい。9月25日には天満宮の例祭を盛大に行いたいと思っている。多くの人に集まってほしい」と意気込み、震災から11年を経てようやく神社が再建されたことを喜んだ。