まぐろ水煮缶 うま味増すか 市内2事業者が共同で海中熟成を試験実施 来夏、引き揚げ試食会
令和3年7月27日付 7面
陸前高田市の合同会社・ぶらり気仙(鍛治川直広代表社員)と㈱タイム缶詰(吉田和生代表取締役)は、メバチマグロの水煮缶を広田湾内に沈め、味の変化を確かめる試みを始めた。ぶらり気仙は、地酒をはじめ地場産品の海中熟成に取り組んでいるが、缶詰は今回が初めて。約1年間海中に沈めたあと試食会を開き、商品展開にも生かしていく。
広田湾内に沈めたのは、タイム缶詰製造の「気仙沼産メバチマグロの水煮(野菜スープ煮)」(180㌘)90缶。今月初旬、カキ養殖施設に缶詰をつるし始めた。
ぶらり気仙によると、缶詰は時間がたつほどまろやかなうま味が増し、一般的に陸上で1年間熟成させた缶詰が流通しているという。海中は安定した温度や潮の流れが酒などの熟成を促すとされ、こうした特性を缶詰に生かすことができるか確かめることとした。
ぶらり気仙は平成29年、地元海産物の認知度向上、地域経済の活性化を図ろうと、広田湾遊漁船組合(大和田晴男会長)とともに「広田湾海中熟成プロジェクト」を立ち上げた。
地酒を海中に沈めたり、熟成後、海中から引き揚げる作業などを観光体験サービスとして商品化。昨年6月からは、好みの酒を約10カ月間海中に沈め、発送する熟成酒のインターネット販売にも乗り出した。
地場産品の付加価値を高めるべく、日本酒だけでなく、ワインやジュース、コーヒー豆などさまざまな食材を海中で寝かせ、味の変化を確かめる調査も実施。一昨年には、今後発展が期待される先進的な取り組みとして、産業観光まちづくり大賞(全国産業観光推進協議会など主催)の金賞を受賞した。
ぶらり気仙スタッフの川上桂佑さん(29)は「缶詰の海中熟成はおそらく世界初の取り組み。こうした希少性を高品質な缶詰に加えられれば。1次産業、2次産業の所得向上、地域経済活性化につながるようさまざまな取り組みにトライしたい」と意気込む。