自主事業で再スタート 「思い出の品」返却業務 三陸アーカイブ減災センター
令和3年7月29日付 7面
東日本大震災の津波で流された写真や物品など「思い出の品」を持ち主らに返却している陸前高田市の一般社団法人・三陸アーカイブ減災センター(秋山真理代表理事)は、これまで市からの委託事業だった返却業務を自主事業として再スタートさせた。寄付金を中心とした自主財源を用い、活動の継続を求める人たちの声に応えていく。
寄付金活用して継続
同センターは、竹駒町の旧市立図書館事務所を常設返却会場とし、被災写真や物品などを現物、データで管理。これまでの返却業務は、復興庁の被災者支援総合交付金(「心の復興」事業)を活用した市の震災拾得物等返還促進事業を受託して行ってきた。
同事業は、国の第1期復興・創生期間の終了に伴い今年3月末で終了。これに伴い、同センターは市に独自財源による返却業務の継続を申し出た。市が所有する思い出の品と同事務所の貸し出しを許可され、再出発する。
同センターによると、同市の思い出の品は、発災後、約400回にわたる市内外での出張返却会などを通じて約1万人に返却。現在7万点余りが残っている。
常設会場で保管されている写真は、持ち主の家族やペットが写っているもの、学校生活や旅行先の一場面、式典の様子などさまざま。津波で海水をかぶったあとに修復された写真や写真シール、有志から提供された思い出の風景写真などもある。
震災前に市の広報担当が撮影した風景写真も閲覧することができ、私的利用に限り、メーカーにプリントを外注(有料)できる体制を整えた。
また、位碑や木像、表彰状、トロフィーといった物品も保管。常設返却会場では実際に現物を見たり、同センター独自のデータベースを参考にしながら探しているものかどうかを確認できる。
常設返却会場以外では、高田町のアバッセたかたで出張返却会を開催。市が各戸配布するチラシなども通じて、広く思い出の品の存在を周知している。
自主事業による返却業務の継続にあたっては、運営資金確保のため寄付金を広く募る。毎月の寄付金額を1000円から選べる「マンスリーサポーター」の募集を本格的に始め、持続可能な運営体制の構築を目指す。
秋山代表理事は「震災のつらい記憶と向き合えるようになるタイミングは人それぞれ。当時、子どもだった人が大人になってから思い出の品を探しに来るというケースもある。希望する人がいる限り、探せる場は残していかなければならない」と、業務継続の意義を語る。
また、他自治体との連携やインターネットを活用した返却活動も見据え、「資金に余力が出れば、業務の充実に還元していく。さまざまなニーズに応えられるよう、取り組みをこれからも続けていく」と決意は変わらない。
常設返却会場の休館日は、毎月2、3、12、13、22、23の各日と、出張返却会の開催日。開館時間は午前10時〜午後5時。
問い合わせは同センター(℡47・4848、Eメール:info@shinsai-archive.org)へ。