待たれる来年秋の開館 再建の市立博物館完成 海貝Mと一体整備

▲ 完成した市立博物館。来年秋ごろまで「枯らし期間」を設けて開館を迎える

 東日本大震災で被災し、陸前高田市高田町の中心市街地で再建工事が進められていた市立博物館が完成した。今後、展示資料の劣化を防ぐため、館内の空気を清浄化する期間に入り、市教委は来年秋ごろの開館を目指している。津波で被災した「海と貝のミュージアム」と一体的に整備された施設で、開館が待たれる。

 

館内空気環境調査へ

 

 建設地はJR陸前高田駅西側で、敷地は約6650平方㍍。建物は鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)の2階建てで、延べ床面積は2800平方㍍。
 建築工事費は約19億円。1階は常設展示室や企画展示室、作業室など。作業室は資料の安定化処理や管理などの保存・修復作業の様子をエントランスホールから見えるよう一部ガラス張りにする。
 2階は収蔵庫や機械室などが入り、屋上には展望デッキを設け、復興が進む市街地などを一望できる。
 かつて海と貝のミュージアムにあり、「つっちぃ」の名で親しまれたツチクジラのはく製も再び展示する。茨城県の国立科学博物館筑波研究資料センターでの修復を終え、昨年12月、建設中の博物館に運び込まれた。
 今後は、コンクリートなどが放出し、展示品や収蔵品に有害な化学物質の屋内濃度を低減させる「枯らし期間」を設ける必要がある。文化庁の指針では「建物内の空気環境を安定させるため、コンクリート打設後から公開までの期間は、二夏の経過(夏を2度越すこと)、またはこれに相当する環境の実現が望ましい」とされる。
 市教委は空調機などを使いながら常時換気し、月に2回、展示室や収蔵庫の環境調査を実施する。調査を踏まえて展示品を搬入する。開館前に、市民向けの見学会を開催できるか検討していく。
 同市では、震災で被災した気仙町今泉地区の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」の復旧が今月から本格化する。箱根山には、気仙大工と左官の建築技法を伝える「気仙大工左官伝承館」があり、こうした施設を活用し、歴史・文化を生かした観光振興にもつなげたいところだ。
 市教委の細谷勇次教育次長は「まずは開館を目指して環境調査に努める。市立博物館に吉田家文書を展示するなど、関連性のある施設間で連携し、誘客を図っていきたい」と見据える。