過疎債活用の行方は 市議会全員協議会 〝有利な財源〟に関心高く

▲ 過疎地域持続的発展計画案に基づく議論が行われた全員協議会

 大船渡市議会全員協議会は3日、議場で開かれ、市当局がまとめた市過疎地域持続的発展計画案の説明が行われた。今年4月に施行された「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」(過疎法)の対象自治体に同市も加わり、過疎対策事業債(過疎債)の活用といった支援措置が受けられる見込み。市議との協議では、人口減少などで予算確保が厳しくなる中での〝有利な財源〟として、過疎債の活用策などを巡り議論が交わされた。

 

持続的発展計画策定へ

 

 今回の過疎地域の指定には、国勢調査による人口要件と財政力要件の基準がある。人口要件のうち、昭和50年〜平成27年の長期人口減少率が28%以上となれば該当。また、同年の高齢者(65歳以上)比率が35%以上か、若年者(15歳以上30歳未満)比率が11%以下の場合、人口減少率の比率が23%以上に緩和される。
 大船渡市の減少率は23・4%。高齢者比率は34・1%で基準よりも低いが、若年者比率が10・7%となった。
 財政力は、平成29年度〜令和元年度の財政力指数(基準財政収入額を基準財政需要額で割ったもの。高いほど、財政に余裕があるとされる)で0・51以下が要件。同市は0・465となった。
 これまで過疎法対象で、要件基準から外れた「卒業団体」は全国45市町村。新規は大船渡市を含む48市町で、全体で820市町村となる。県内で新たに指定されるのは同市のみで、卒業団体はなく、陸前高田市や住田町を含め沿岸市町村はすべて該当となった。
 これを受け、市は本年度から5年間を期間とする過疎地域持続的発展計画の策定に向け、庁内で協議を重ねてきた。すでに、市総合計画や第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略等で持続可能で自立した地域社会に向けた取り組みを展開しており、過疎地域からの脱却とともに、各計画との整合性も意識した内容となっている。
 案では、地域の持続的発展の基本方針として、総合計画の将来都市像にもなっている「ともに創る やすらぎに包まれ 活気あふれる 三陸のにぎわい拠点 大船渡」を掲げる。人口の将来像展望には、人口ビジョンと同様の目標値を掲げ「令和7年度に社会増減ゼロ」(2年度はマイナス246人)などを盛り込んだ。
 さらに▽移住・定住・地域間交流の促進、人材育成▽産業の振興▽地域における情報化▽子育て環境の確保、高齢者等の保健及び福祉の向上、増進▽再生可能エネルギーの利用推進──などの12項目で、過疎債などを生かした事業が見込まれるソフト、ハード各分野の「重点項目」を記載している。
 重点項目について、市当局は「総合計画などの事業から国、県補助の割合が高く市の〝持ち出し〟が少ないものや、3年度のみの事業、維持・管理事業を除外したものを登載した」と説明。結果的に、市の一般財源を多く用いる見込みの事業が多くなっている。
 過疎債は充当率が100%。元利償還の70%が交付税措置で、財政運営では使い勝手の良い財源となる。一方、本年度配分額は国全体で5000億円で、これが820市町村に配分されるため、効率的・戦略的な活用が求められる。
 議員からは、重点項目をまとめた総事業費や今後5年間での過疎債活用の見込みを問う声が出たが、具体的な数字を用いた説明はなかった。活用で〝浮いた〟分の一般財源に関しては、これまでの財政運営では財政調整基金から取り崩してきた状況もあるとし、健全化に努めるとした一方、今後新規事業を盛り込む可能性も示唆した。
 また、過疎債は有利な財源である一方で〝借金〟には変わらないとし、「後世の負担が大きくなるのではないか」との指摘も。計画では「過疎指定からの脱却」を目指していることから、要件基準に直結する分野の集中的な展開を求める声も出た。
 復興財源や合併特例債の活用時期が終わり、今後は歳入で地方交付税の減少が見込まれ、財政運営が厳しさを増す中での補塡(ほてん)的な活用も話題に。農業分野や子育て世代の負担軽減につながる活用を求める意見もあった。
 同計画案は市ホームページでも公開しており、市は9日(月)まで住民意見を募集。市当局は、市議会9月定例会で見込まれる議決を経て、策定を目指す。