「おいしくなあれ!」 いかわこども園の年長児らが毎年恒例の梅干しづくり、震災時には避難所にも(別写真あり)
令和3年8月7日付 7面

大船渡市猪川町のいかわこども園(鷲田あかね園長、園児143人)で5日、年長児たちが毎年恒例の梅干しづくりに取り組んだ。同園では長年にわたって食育に力を入れており、梅干しづくりは平成19年にスタート。東日本大震災直後には、当時の園児が作った梅干しを避難所に届けたこともある。この日は最後の工程にあたる「本漬け」を行い、「おいしくなあれ!」と願いを込めながら干した梅をバケツの中に入れた。
10年以上前から食育に取り組む同園。子どもたちが喜ぶ内容を年齢や発達段階に合わせて考案しており、調理の楽しさを体感する「クッキング」をはじめ、たくあん、干し芋といった昔ながらの食べ物づくりにも挑戦している。
梅干しづくりも、こうした食育に関する取り組みの一環。梅干しは、新米の時期におにぎりの具材にしたり、10月の運動会で疲労回復のために食べたりするほか、熱中症対策や日々の給食にも活用されている。震災時には蓄えていた梅干しを避難所に届け、地域住民らに振る舞った。
今年は7月上旬に園の裏山で約15㌔の梅を収穫。水洗いしたあと塩漬けにし、しその葉を取る作業も行った。
あくを取るためのしそもみは、7月生まれの園児が担当。園児たちは、あくを取り除いたしそに梅を漬けた際に出た汁を入れると、鮮やかな赤色に変化することも学んだ。
梅は今月2日から干し始め、天気に恵まれたこともあって上々の出来栄えに。〝最後のお仕事〟の本漬け作業には年長児28人が参加し、食育を担当している同園の栄養士・日野恵美さん(58)から「クエン酸という疲れを取る栄養がある。暑い日に食べると熱中症予防にも」などと説明を受けたあと、干されてしわしわになった梅をバケツに入れていった。
続いて、日野さんが梅の上にしそをかぶせ、漬けていた汁を再び投入。園児たちは驚きの声を上げながらその様子を見守り、完成を待つばかりとなった梅干しを興味深げにのぞき込んだ。
日野さんは「生きる力や食べる楽しさを子どもたちに知ってもらいたい。昔ながらの食べ物を伝えながら、家ではなかなかできない経験をさせてあげることができたら」と食育に願いを込める。「そろそろ世代交代するが、梅干しづくりはずっと続けてもらいたい」と話していた。