七夕 雰囲気だけでも 地域におはやし響く コロナ禍で今年も中止
令和3年8月8日付 7面

「来年こそ」願い込め
毎年8月7日に開催される陸前高田市高田町のうごく七夕、気仙町今泉地区のけんか七夕は、新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年に続き2年連続で中止となった。東日本大震災後も地域の力を結集して続けてきた伝統行事で、両地区では7日、山車を展示したり、祭りのおはやしを響かせるなど、地元有志が来年の開催、コロナ収束を願いながら思い思いの形で七夕の雰囲気を味わった。
先祖供養の思い絶やさず
高田町「うごく」
うごく七夕は、まちを練り歩く山車の運行は中止となったが、各地区で七夕にちなんだ取り組みが行われた。祭り伝統の赤い竹飾り「ランバン」(「ナンバン」とも呼ばれる)を山車の上などに天高く掲げ、住民らが先祖供養や来年の祭り実現への思いを共有した。
このうち鳴石公民館では、鳴石町内会(大森俊一会長)の有志らが祭組の山車を日中に展示。一昨年の祭りで使用し、飾りを付けたまま倉庫に保管していたものを表に出した。
山車の上には、有志らがこの日の朝に制作した長さ14㍍ほどのランバンを設置。ランバンは、「先祖の霊が空から帰ってくるときの目印」として飾られるもので、「うごく七夕」実行委(横田祐佶会長)からの「先祖供養という祭りの原点に立ち返りたい」という希望もあって伝統をつないだ。
展示中は、親子や祭りを愛する住民らが来場。淡色のグラデーションが美しい「みす」や吹き流しなど、鳴石地区ならではの飾りが映える山車を見上げて、晴れやかな笑顔を広げた。
大森会長(74)は「鳴石の七夕を忘れないように、という思いで山車を展示した。地域の子どもたちも祭りを待っている。伝統を継承していくためにも、来年こそは開催を」と力を込めた。

気仙小児童が山車の上で太鼓と笛を披露すると、特別に駐車場内のみ山車を動かす演出も
2年ぶりに山車登場
気仙町「けんか」
気仙町今泉地区では、「気仙町けんか七夕祭り保存連合会」(佐々木冨寿夫会長)が2年ぶりに山車1基を組み立て、高台にある同地区コミュニティセンターで展示。山車の運行や山車2台をぶつけ合う「けんか」は見送ったが、太鼓を積んだ軽トラックとアザフを飾ったリヤカーが地区内をまわり、力強い太鼓と軽快な笛の音を響かせた。
練り歩きに先立ち、同連合会は震災後、毎年祭りの運営を支援してきた茨城県つくば市のスーパー、㈱カスミ(山本慎一郎代表取締役社長)に気仙杉で作った感謝状を贈呈した。新型ウイルスの影響で練習の成果披露の場が少なくなった気仙保育所や気仙小学校の子どもたちのために太鼓を演奏する場も設けられ、保護者らが笑顔で見守った。
同保育所の菅野瑛心君(5)は「みんな見てくれてうれしかった。楽しかったです」とニッコリ。同地区出身の会社員・佐々木匠さん(23)=高田町=は「早く自分たちだけで山車を組み立てられるようになりたい。本来の七夕ではないが、それでも楽しかった」と満足げだった。
約900年の歴史を持つと伝わるけんか七夕。長さ15㍍の丸太の「かじ棒」をくくり付けた山車2基を豪快にぶつけ合うのが最大の呼び物で、今泉地区の伝統行事として親しまれている。
震災で四つの祭組が1基ずつ所有していた山車は、1基を残して流失。住民自身も自宅を流され、市内外に散り散りとなった中で祭りを継続してきたが、昨年、コロナ禍の影響で中止した。祭り当日は、見物客が大勢集まるため、感染リスクを回避できないとして今年も開催を見送った。
佐々木会長(68)は「簡易版であっても山車を作ることができた。伝統を途絶えさせないための課題は尽きないが、若い世代も積極的に携わってくれて頼もしい。来年は、今後の10年につながる七夕になればいい」と願った。