東日本大震災10年/碁石の滞在拠点 復興着実に キャンプ場利用1万人到達(別写真あり)

▲ 1万人目の利用者となった三和さん親子(右側)を祝福

 東日本大震災の発生から、きょうで10年5カ月。大船渡市末崎町・三陸復興国立公園内の碁石海岸キャンプ場は、環境省による「グリーン復興ビジョン」の一環で平成26年に再整備されて以降、累計利用者が1万人に達した。地域資源を活用した復興を見据えて生まれ変わった空間は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも利用が堅調に推移。今後も、震災後に設定された「三陸ジオパーク」「みちのく潮風トレイル」を生かす拠点としての役割や、体験型観光充実へのけん引などが期待される。

 

きょう震災10年5カ月

再整備から7年 広がる役割

 

 同キャンプ場では10日、1万人目の利用客となった金ケ崎町の三和一寿さん(39)と妻の綾さん(38)、長男の祷直君(9)、次男の凌直君(4)を祝福。管理を担う市観光物産協会の齊藤俊明会長が、家族に花束や記念品を手渡した。
 三和さん家族は初めての利用で、2泊3日の予定でチェックイン。一寿さんは「海が近くにあるので、子どもと釣りを楽しみたいと思っていた。震災からしばらくは、太平洋沿岸は少しちゅうちょしていたが、今は落ち着き、新型ウイルスの影響で近場で楽しむ機会が増えているので、これから〝開拓〟したい」と話していた。
 同キャンプ場は陸中海岸国立公園時代の昭和53年にオープン。震災前までは、年間利用者が1000人を下回る年が多かった。
 震災後、環境省は三陸沿岸の国立公園再編を盛り込んだグリーン復興ビジョンを策定。碁石海岸ではこれに基づき、インフォメーションセンターの新築、キャンプ場と乱曝谷展望台の再整備が平成25年3月から順次進められ、翌年4月までにすべて完了した。
 キャンプ場は自動車対応のオートサイト16カ所やトイレ・シャワー棟を整備。災害廃棄物を再利用して広場兼フリーサイト(テント20張)のかさ上げも施した。
 トイレ・シャワー棟と設備棟では、震災で課題が浮き彫りになったライフライン途絶の教訓を踏まえ、木質バイオマスのチップボイラー、ソーラー発電機などを導入。一時的な避難場所や減災・環境学習の場としても活用を図ってきた。
 利用者の動向をみると、リニューアル初年度の26年度は683人だったが、翌年度は1200人を突破。一昨年の令和元年には1900人を超え、昨年度は5月の新型ウイルスの影響で大型連休中は開設しなかったものの、約1500人となった。
 キャンプを楽しむだけでなく、利用客は海岸沿いの散策などで自然に触れたり、市内の飲食店を訪れる動きも。「みちのく潮風トレイル」を巡るハイカーらも受け入れている。
 本年度の開設期間は9月30日(木)までと、10月中の土・日曜日。感染防止のため、オートサイトの貸出数は半数の9サイトで、隣り合うサイトの利用などは受け付けず、県内在住者に限定しているが、昨年を上回る予約数で推移している。
 隣接するインフォメーションセンターの職員は昨年度までは復興支援員として業務にあたってきたが、国が定めた復興・創生期間が終了した本年度からは、観光物産協会の職員として継続雇用となった。これまでの経験を生かし、来訪者のニーズに合ったきめ細やかな観光情報を提供できるなど、協会としてのメリットは大きい。
 前年度までは復興支援員で、本年度もキャンプ利用客らに対応している同協会の小松瞳主事は「地元の方々に気軽に利用してもらえるようなイベントも考えたい」と今後を見据える。
 齊藤会長は「碁石は50年近く、穴通磯を中心に宣伝してきたが、キャンプ場やレストハウスでのサービス、島々や波しぶきの美しさなど、もっと幅広くPRしていく必要がある。そういった意味で、キャンプ場も今後に向けて発展性がある」と展望。
 そのうえで「サンマやサケなど漁業資源が不安定な状況となっており、基幹産業の水産業も厳しい中、観光を産業に確立させていく必要がある。自然を守りながら、産業の方向にも結びつけていくことができれば」と、力を込める。
 同センターのホームページでは、キャンプ場の「空き状況」の目安を紹介。問い合わせも同センター(℡29・2359)へ。