共生社会実現の願い込め 東京パラ・県内聖火フェス採火式始まる(別写真あり)
令和3年8月13日付 1面
東京2020パラリンピックの聖火フェスティバル県内採火式は12日に始まり、陸前高田市では小友町の気仙大工左官伝承館で行われた。阪神・淡路大震災で被災した兵庫県神戸市のガス灯モニュメントから分灯された「3・11希望の灯り」から、東日本大震災支援への感謝、共生社会実現への思いを込めて採火。16日まで県内33市町村でともされた炎は、盛岡で一つに集め、開催都市の東京へ送り出す。
陸前高田は「3・11希望の灯り」から
同伝承館での採火式には、式典行事の市実行委や関係者ら約50人が出席。実行委を代表し、舟波昭一副市長が「いよいよ東京パラリンピックが開幕する。陸前高田市からは復興の願いが込められた『3・11希望の灯り』の火を届ける。震災後、国内外から支援を受けた感謝の気持ちを託したい」とあいさつした。
採火は、同館を運営する箱根振興会の藤原直美会長(77)と、盛岡での集火式に同市代表として出席する高田町の介護職員・高橋未宇さん(21)が行った。ガス灯にともる火をランタンに移すと、会場から大きな拍手が送られた。
藤原会長は「採火された火は国立競技場の聖火台へとつながり、振興会にとっても長きにわたり語り継がれる大事業。希望の灯りの隠し持つエネルギーを送りたい」と願いを込めた。
3・11希望の灯りは、NPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯り」が神戸市の東遊園地に設置したモニュメントから分灯を受け、東日本大震災発生から9カ月の平成23年12月に同館敷地内に設置。津波犠牲者の追悼や震災復興の思いなどが込められた地域のシンボルとなっている。
聖火フェスの県内採火は、各市町村の特色を生かした手法で行われるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で式典行事の開催を見送った自治体も。気仙地区では14日に住田町役場で、15日に大船渡市大船渡町の須崎川親水広場で予定しているが、状況によっては見合わせる場合もある。
集火・出立式会場は盛岡市のイオンモール盛岡で、各地の思いが込められた火を一つにまとめ、東京へと旅立つ。聖火リレーは17日から静岡、千葉、埼玉、東京の4都県で行われ、大会は24日に開幕する。
脳性麻痺のため車いすで生活する高橋さんは「3・11希望の灯りのもととなった火には、多くの人のエピソードがある。『ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり』を目指す陸前高田市の代表として火をつなげられることを大変光栄に思う。心を込めて集火式に臨む」と決意を語った。
3年前には同市で開かれたマラソンイベントに車いすで完走したことがあり、「これからも障害者スポーツに関わっていきたい。パラリンピックは全競技を応援する」と開幕を心待ちにしていた。