ふるさと納税〝追い風〟に対応へ 返礼品内容の拡充目指す 上限引き上げや細分化も

 大船渡市は、ふるさと納税「ふるさと大船渡応援寄附」の受け付け体制を見直し、上限額の引き上げや寄付受け入れ額の細分化を進めながら返礼品の拡充を目指している。寄付実績は増加傾向にあるものの、全国的にも伸びており、他の自治体も力を入れている中で寄付希望者へのPRや魅力ある返礼品体制が求められている。市は返礼品の拡充を通じて、特産品の新たな販路開拓など産業振興への波及も見据える。

 

全国的に実績増加、特産品の販路開拓見据え

 

 市は平成20年、市への関心を深めてもらう機会創出とともに、広く財源確保を図ろうと、応援寄付制度を創設。市ホームページなどで周知を図りながら、ポータルサイトや書面による申し込みで寄付を受け付けてきた。
 給与所得者らが確定申告不要で控除を受けることができるワンストップ特例制度が創設された27年度以降をみると、件数は4000~6500件、寄付額は約7500万円~1億1000万円で推移。令和2年度の実績は件数が9513件、金額は1億7193万円と大きく伸びた。
 市はこれまで、インターネットでの寄付受け入れ窓口となるポータルサイトに「ふるさとチョイス」「ふるさとプレミアム」を導入。昨年度は、イベント時などに寄付が多く集まる「楽天ふるさと納税」も加えた。
 寄付実績の増加について、市は「ポータルサイトで紹介された定期便商品の需要増加、東日本大震災から10年を契機としたメディア露出の増加による寄付意欲の喚起が考えられる」と分析する。
 全国的にも、ふるさと納税の受け入れ額は増加を続ける。昨年度の実績は6725億円で、対前年度比で1・4倍増となった。
 県内自治体の中でみると、大船渡市の実績は中位にある。県内では、実績トップの北上市が29億円を超えている一方、1000万円未満の自治体も複数あり、全国の寄付希望者から選んでもらえる返礼品の発掘・充実や新規参入促進の重要性が高まっている。
 こうした中、市は先月、受け付け体制を一新。寄付上限額は、5万円から50万円に引き上げた。これまでは復興に向けて取り組む中で国内外から多大な支援を受け入れた状況を考慮し、全国的にも低額に抑えてきた。
 東日本大震災発生から10年が過ぎ、昨年度で第1期復興・創生期間が終了し、新たなまちづくりを推進する段階に入っている中、支援や将来への期待を集める受け皿としての充実を図る。返礼品は「寄付額の3割以内」との通達があり、上限額を引き上げることで、返礼品の充実・多様化も見据える。
 これにより、毎月1万円程度の返礼品を配送するといったサービスも可能に。多様な返礼品の掘り起こしにつなげる。
 また、寄付の受け入れ額は、1、2、3、5万円しかなかったが、見直し後は1~50万円の中で1000円単位に細分化。返礼品の価格設定の自由度を高め、新たな事業者の参入を促す。
 現在、市の制度には43事業者が約240品を出している。これまでの返礼品では、家庭で手軽に調理できる水産加工品が人気を集め、複数回に分けて届く「定期便」も好評。全国的には12月前後の寄付申し込みが多く、年末年始に届く商品も関心を集める。
 今後はさらなる水産加工品の充実に加え、菓子や畜産分野の品ぞろえの増加や、業者内で取り扱う製品の組み合わせといった展開の広がりも期待される。各事業者の新商品開発や、インターネット販売の充実などへの波及も注目される。