伝統の供養行事 絶やすまい 三陸町越喜来で「港まつり」2年ぶり開催 震災犠牲者や先祖思い(別写真あり)
令和3年8月18日付 7面
大船渡市三陸町越喜来の越喜来漁港で16日、「三陸港まつり」が2年ぶりに開かれた。新型コロナウイルス禍でも、先祖や東日本大震災の犠牲者などの供養行事として46回目を数えた地域の伝統の灯を絶やすまいと、開催に踏み切った。郷土芸能の共演などを通じ、子どもたちにも古里の伝統や風土を感じてもらう機会として、住民らが愛着を深めた。
今年のテーマは「未来は祭の輪の中に」。地元の郷土芸能団体や自治会などで組織する実行委員会(古水力委員長)が主催した。昨年は中止し、郷土芸能披露を中心に「お盆供養」という形で代替した。古水委員長は「東日本大震災から10年がたった今年は、何とか供養行事を執り行いたかった。震災を風化させず、古里越喜来がさらに発展するように皆さんと頑張っていきたい」とあいさつした。
越喜来地区では、同震災で88人が犠牲になったとされる。会場には、同震災や海難事故の犠牲者、魚類などを含めた霊をまつる「三界萬霊」と刻まれた「供養塔」を設け、灯籠供養は例年より数を減らして実施。僧侶による法要に合わせ、三つの灯籠を岸壁から一つずつ漁船に乗せて運び、海上に浮かべた。
青山学院大の学生が中心となり、被災地で活動する団体「Youth for Ofunato(ユース・フォー・大船渡)」は越喜来出身の及川奈津子さん(東洋大4年)と大船渡高、高田高の生徒を含め7人が参加。ペットボトルで手作りした灯籠で「三陸港まつり」の文字を夜の岸壁に浮かび上がらせ、拍手が沸き起こった。
一昨年から何度も越喜来に足を運んできた同団体の小田佳祐代表(青山学院大3年)は「震災後に立ち上がった団体として、先輩からも受け継いだ越喜来の人の温かさなどの魅力を伝え、地域とのつながりを大事にした活動を続けたい。地元の人たちの心の復興の一助につながってほしい」と思いを寄せた。
郷土芸能共演では、地元の浦浜念仏剣舞、金津流浦浜獅子躍、同市が拠点の和太鼓三扇会、北上市の黒岩鬼剣舞の4団体が供養塔の前でそれぞれ雄壮に披露。集まった地元住民や来賓を楽しませた。
浦浜念仏剣舞で出演した古水里さん(大船渡一中3年)は「コロナ禍でも踊れることになったからこそ、10年前の震災で亡くなった方の供養になればと思いを込めた」と話した。
新型ウイルスの感染拡大を踏まえ、従来行ってきた花火や灯籠行列、飲食出店は取りやめた。
目玉の一つとして予定していた「子ども郷土芸能交流」も県独自の緊急事態宣言の発令を受け、中止した。