川面の灯ろうに祈り 須崎川親水広場で「キャッセン海灯」開催(別写真あり)

▲ 灯ろうの明かりが川面を照らし、幻想的な雰囲気に

 大船渡市大船渡町のキャッセン大船渡エリアに位置する須崎川親水広場で16日、「キャッセン海灯(うみあかり)」が開催された。供養の灯ろうが川面をゆっくりと流れる光景を地域住民が見つめ、亡き人をしのぶとともに、新型コロナウイルスの早期影響収束にも願いを込めた。

 市内有志で構成する海灯フェスタ実行委員会(小泉洋委員長)が主催し、キャッセン大船渡(田村滿社長)と本増寺(木村勝行住職)が共催。東日本大震災の復旧・復興事業で生まれ変わった市街地で先祖や東日本大震災犠牲者の冥福を祈ろうと、3年前から毎年この時期に実施している。
 親水広場に隣接するキャッセン大船渡の「千年広場」では、小泉委員長が「昨年まで実行委員長を務めていた新沼崇久君が急逝したが、せっかくともし続けてきた明かりを絶やしたくなかった。開催に向け、本増寺やキャッセンの商店街の皆さんに支えられた」とあいさつ。木村住職も「海からの災難は避けることはできないが、大船渡が灯ろう流しなどを率先して行い、心を一つに供養することが大事」と語った。
 引き続き、木村住職らによる法要が執り行われ、竹明かりの光に包まれた祭壇に向かって参列者が焼香。須崎川上流の商人橋たもとからは、約200個の灯ろうが次々と流された。
 灯ろうがつるされた船も浮かび、ゆっくりとただよいながら、幻想的な雰囲気を演出。川岸には幅広い世代の住民が訪れ、涼やかな風を浴びながら見入っていた。
 間近で眺めた盛町在住の水間陽介さん(39)は「距離は短いが、夕方から夜にかけて空の色が変わる中で幻想的な雰囲気が美しい」と語り、目を細めていた。
 実行委員会のメンバーで、本増寺副住職の木村匡宏さん(51)は「新型ウイルスの影響が続き、一人一人の気持ちがバラバラになりがち。みんなで先祖を見送ることで、一つになることができれば。まちの復興を思う願いも、消してはいけない」と話していた。
 会場では、検温に加え、手指消毒の徹底も要請。橋や川岸では、距離を確保しながら川面を見つめる姿が目立った。日中に予定していたキャンドルや灯ろうづくりのワークショップは中止となった。