災害や発症時に「人助けたい」 上級救命技能者に認定 上関さん(赤崎町)が市内で唯一
令和3年8月20日付 7面
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大船渡市赤崎町の上関拓也さん(37)は今月、大船渡地区消防組合消防本部(大畑養一消防長)から上級救命技能認定を受けた。講習を受講し、自動体外式除細動器(AED)の使い方や乳幼児の心肺蘇生、外傷の応急手当てなどの知識、技能を身につけた。同部によると、市内在住者では現在、唯一の認定者となった。市中心部で飲食店を営み、3歳の子の父親でもある上関さんは災害や猛暑で「お客さんや子どもに万が一のことがあった時に助けたい」と話している。
上級救命技能は消防庁の「応急手当ての普及啓発活動の推進に関する実施要綱」に基づき、全国の各消防本部などが指導する公的資格で、気仙では大船渡地区消防組合消防本部と、陸前高田市消防本部で講習を受けられる。
上関さんは今月2日と10日の2回に分け、大船渡消防署三陸分署綾里分遣所の室由一所長を講師として計8時間の講習を修了し、同日、認定証を手にした。大船渡地区消防本部では一昨年、宮城県気仙沼市の受講者を認定したが、大船渡市在住者では初めてとなった。有効期限は3年間で、定期的な受講が必要になる。
講習内容はAEDの操作、胸骨圧迫、人工呼吸などで、乳幼児や高齢者等、年代によっても異なる処置法を詳しく学んだ。救急車が到着するまでの間の処置により、「生きるか死ぬか決まることも多い」と知らされた。上関さんは「実体験をもとに教わり、分かりやすかった。今まで全く知識がなかったが、蘇生でも心臓の位置など、処置法が正しくないと意味がないことも分かった」と振り返った。
室所長は「座学では一生懸命質問し、実技でも積極性と真剣さが伝わった。救急隊員と同じくらいのレベルになった」とたたえる。
大船渡町出身の上関さんは10年前の東日本大震災発生時は関東の飲食店で勤務していた。発災時のまちを直接は見ていないが、津波で多くの犠牲者が出た中で「意外と誰も認定を受けていないことに驚いた」と話す。
5年前に帰郷し、仮設商店街・大船渡屋台村などでの営業を経て、現在は同震災の浸水域だった大船渡町のキャッセンエリアで黒船グループ2号店「貝だしラーメン黒船SECONDO(セカンド)」の店長として人気店を切り盛りしている。
「人を助けられることはかっこいい」と、中学生の頃まで火の中に突っ込んでいく消防士の姿に憧れていた上関さん。高校時代まで野球部に所属した。長男・千歳君(3)が今後成長し、スポーツに興味を持つことも見据え、熱中症などを発症した際にも「慌てずに対処することができるようになりたい」と自ら調べ受講を決めた。
近年は全国で豪雨災害なども相次ぐ中、上関さんは「救命講習があることを知ってもらい、みんなで助け合えるまちにつながってほしい」と願っている。
室所長も「現場で心肺停止になっても、救急隊到着までに蘇生が行われているケースは少ない。人ごとと思わず、身近な人を助け、守るために受講してほしい」と呼びかける。
気仙3市町で受講を希望する場合は大船渡地区消防組合消防本部(℡27・2119)か陸前高田市消防本部(℡54・2119)へ。