電動カートで移動快適に きょうから実証実験 観光客向けに復興祈念公園内で活用

▲ 9月20日までレンタルする電動カート

 陸前高田市は21日から、高田松原津波復興祈念公園内を巡る観光客の移動支援策確立に向け、環境に優しい電動カート活用の実証実験に取り組む。園内に点在する東日本大震災遺構などを案内するパークガイド事業が始まった中、敷地は約130㌶と広大で、高齢者や障害者でも快適に見学できる移動サービスが求められている。国連のSDGs(持続可能な開発目標)実現を推進する取り組みでもあり、運行ルート検討やニーズ調査などを行い、来年度の本格運用を目指す。

 

来年度の運用目指す

 

 市は、観光振興や経済活性化、多様なコミュニティー形成を目的に、時速20㌔未満で公道を走れる電動車「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」導入を目指しており、市道が通る公園内での電動カート活用もこの一環。
 実証実験用の車両は7人乗り(全長3・1㍍、幅1・3㍍、高さ1・8㍍)。9月20日(月・祝)まで1台をレンタルし、運転講習や公園内(現在は臨時閉園中)の試験運行などを行う。
 本格導入後の利用はパークガイド付きを想定し、10月以降はガイドの案内時間や運行ルートなどを協議していく。実証実験の事業費は253万円で、県の補助金を活用する。
 祈念公園は、震災犠牲者の追悼、教訓の伝承、にぎわいの再生を目的に、国、県、市が一体となって整備している。一部の利用が始まった一昨年9月以降、県内外から観光客が訪れ、園内の道の駅「高田松原」は今年7月、来店者数が累計100万人に達した。
 震災遺構は▽奇跡の一本松▽陸前高田ユースホステル▽タピック45(旧道の駅高田松原)▽旧気仙中校舎▽下宿定住促進住宅──の五つ。西側の旧気仙中と東側の下宿定住促進住宅は約2㌔離れており、市は観光客に加え、高齢者や障害者にも優しい同市ならではの移動手段を検討してきた。
 そこで着目したのが環境負荷の少ない「グリスロ」。市は国から「SDGs未来都市」に選定されており、SDGs達成に通ずる各種取り組みを積極的に展開している。
 電動カートとは別に、中心市街地や市内の主要観光施設などを周遊するバス型車両導入に向けた実証実験も昨年度まで2年連続で実施。本年度車両を手配し、来年度から本格的に運行していく計画だ。
 市観光交流課の村上知幸課長は「本格導入に向けてクリアすべき課題はたくさんあるが、しっかり検討しよりよい移動サービスを確立したい。誰もが住みよい『ノーマライゼーションという言葉のいらないまち』、SDGs実現につながる取り組み。関係機関と連携しながら運用を目指す」と力を込める。