サーモントラウト 安定育成に 盛川漁協の試験事業 一定サイズで魚市場出荷
令和3年8月24日付 1面


猪川町内で整備していた新施設はほぼ完成
大船渡市の盛川漁業協同組合(佐藤由也組合長)は6~8月の約2カ月間にわたり、中間育成試験事業の一環で育てたニジマス「サーモントラウト」を同市魚市場に出荷した。今季は2㌔前後での継続出荷に成功し、平均単価が向上するなど、育成手法の確立による安定生産に手応えを得た。今後は猪川町で整備を進めてきたサーモントラウト専門の養殖設備を生かした事業拡大に力を入れる。
2カ月間で2000匹、来季は新施設活用へ
同漁協の事業はこれまで、サケ養殖とアユの中間育成がメーンだった。しかし、サケ養殖は、回帰率の減少などを受け、厳しい状況が続く。組合運営強化に向け、サーモントラウト事業は平成29年度から試験的に取り組んできた。
ニジマスの養殖魚は、各地で「トラウトサーモン」や地名を冠した「サーモン」などとして売り出され、新たな漁業資源として注目。生食は、刺身やすしねたとして需要がある。
今季の出荷に向けては、民間事業者が雫石町内で一昨年12月のふ化から400㌘程度にまで育てたニジマスを、昨年11月から赤崎町に構える同漁協のサケ・マスふ化場内で育成。盛川の水を生かして育て、今年6月17日に147匹を出荷した。
身は色鮮やかなオレンジ色で、気仙の飲食店や産直施設でも好評。今月5日まで週2回程度のペースで140~200匹程度を出し、総数では2086匹、3・8㌧だった。
重量、匹数ともに昨季の半数以下だが、平均サイズは昨季の1・38㌔から1・82㌔に増加。大きさが安定しないといった育成面の
課題を克服し、後半は目標としていた2㌔を超えるサイズも目立ち、えさ管理などこれまでの経験を生かした育成手法が実を結んだ。
平均単価は657円で、昨季よりも218円上昇。900円を超える取り引きもみられた一方、他産地の動向と同様に新型コロナウイルスの影響による生鮮向け流通の伸び悩みで、価格が昨年以上に上がりにくい面もあったという。
漁協では、本年度もサケの河川遡上(そじょう)の大幅回復が見通せない中、これまでのアユの中間育成に、サーモントラウト育成も加えた〝3本柱〟の事業展開確立を目指している。秋サケが出回らず、生鮮向けの魚種が比較的少ない期間の出荷になるため、漁協内だけでなく広く注目を集めている。
規模拡大に向け、猪川町内ではサーモントラウト専用の新養殖施設がほぼ完成。最大で、今季実績の5倍以上の育成が期待できるという。今後は新施設での育成を主軸とし、来季出荷分からの活用を見据える。
佐藤組合長は「新しい取り組みができるところまできた。サケの水揚げ低迷の影響を補うだけでなく、市内水産業の一助にもなれば。一つずつ課題を克服しながら、規模を拡大させていきたい」と話す。