コロナ禍も前向きに夢追う 大船渡で社会教育実習開始 陸前高田出身の関戸さん(別写真あり)
令和3年8月25日付 7面
陸前高田市米崎町出身の関戸爽さん(20)=大学3年=は23日、大船渡市協働まちづくり部中央公民館(千田晃一館長)で社会教育実習をスタートした。新型コロナウイルス禍で昨年度は前後期ともに全てオンライン授業となり、大学に通えずコロナに翻弄(ほんろう)される中でも、小学校、特別支援学校の教員免許と社会教育主事の資格取得を目指し、前向きに夢を追い続けている。
教員免許などの取得へ熱意
教育学部で学ぶ関戸さんは県内で特別支援学校の教員として働くことを目標に掲げている。実習初日の23日は、市内の地区公民館などを巡り、各館長から公民館の施設の役割や設備について説明を受け、生涯学習の視点から学んだ。実習は始まったばかりだが、「公民館が地域の多様なニーズに応えられるように運営されていることが分かった」と話した。
実習は27日(金)までの5日間。感染対策を万全にし、待機期間を経て臨んでいる。今週は当初、中央公民館が主催する盛地区と三陸町綾里地区の「生きがいセミナー」やスマートフォン使用初心者対象の「やさしいスマホ教室」などに職員と一緒に参加して司会なども務める計画だったが、12日に県独自の緊急事態宣言が発令されたことを受け、全て延期となってしまった。
今後は同公民館の事業説明を受けたり、緊急事態宣言解除後を見据えたセミナーなどのチラシを作ったりする実習を積む。「将来の業務に役立てたい」と前向きに取り組み、最終日は成果発表を行う。
長く小学校の教員を務め、昨年度末で立根小の校長を定年退職した同公民館の千田館長はコロナ禍で人との接触機会が減る中、「広く大人との付き合いを学ぶ機会にしてもらいたい」と願っている。
関戸さんは「専門的なことを突き詰めて勉強したい」と、病弱な子どもへの接し方を学ぶ科目など、特別支援の教員免許を取るために周りの学生よりも多くの授業を受け、単位取得を目指している。
しかし、大学の授業は昨年度は全てオンラインに。本年度前期も感染状況などによってオンラインと対面授業が入り組むような状況で、学生生活はコロナに振り回されている。
「子どもと接したい」と国立「自然の家」のボランティアに登録しているが、ここでもコロナが活動を直撃。川遊びやキャンプなどの行事は軒並み中止となり、運営に携わる機会を失ってしまった。
心の支えとして楽しみにしていた1月の成人式も、出席は実行委のメンバーに限定され、オンライン配信となった。「友達ともなかなか会えず、気晴らしができない中でモチベーションを保つのは難しい時もあった。メンタル面で不安定になる学生も少なくない」と明かすが、投げ出すことなく、夢を追い続けている。10月には地元で教育実習にも臨む。
10年前の東日本大震災が発生したあの日、当時米崎小4年生だった関戸さんは同級生や学校職員と高台に避難し、一夜を明かした。校庭にはその後、仮設住宅が立ち並び、地域の被災者と接する機会も多かった。
「震災の経験も子どもたちに伝えていきたい。特別支援で一人一人の子どもに合わせて接することができるエキスパートを目指す」と未来へ歩み続ける。