白石峠区間「実施は妥当」と県大規模事業評価委が答申 大船渡市と住田町境の難所 新トンネル整備着手へ前進

▲ 急カーブ区間にある現在の白石トンネル=住田町世田米

 岩手県政策評価委員会(加藤徹委員長)は26日までに、国道107号の大船渡市〜住田町に位置する白石峠区間の整備について「事業実施の県評価は妥当」とする答申を達増拓也知事に行った。地域課題となっている急カーブ、急勾配の解消に向けた延長2・3㌔の新トンネル建造などが盛り込まれ、県は来年度から10年間での整備に向け、答申に基づく具体的な対応に入る。

 県による計画延長は2・7㌔で、このうちトンネルが2・3㌔。住田町内には橋梁も設ける。現在の白石トンネル前後にある急勾配・急カーブを解消する形で、ほぼ直線で平たんな新トンネルを整備する計画となっている。
 令和4年度からの事業で、用地着手予定は5年度、工事着手は6年度、供用開始予定は13年度。総事業費は94億円と試算する。
 県は「政策等の評価に関する条例」に基づき、今年5月に大規模事業評価を実施。県土整備部が所管する総事業費が50億円以上の公共事業などが対象で、白石峠整備は「事業実施」と位置づけた。
 知事からの諮問に基づき、政策評価委員会内の専門委員会では6月から、白石峠区間の審議に着手。今月19日まで計3回会議を開いて調査を行ったほか、住民からの意見も受け付けた。結果「『事業実施』とした県の評価は妥当と認められる」との答申をまとめた。
 審議では、現在の白石トンネルが完成した時期との交通量変化も話題に。県が示した資料によると、トンネルが完成した昭和43年と平成27年を12時間交通量で比較すると、3・6倍に増加した。
 国道107号は大船渡市を起点とし、秋田県由利本荘市までをつなぐ。物流、救急医療などで欠かせない主要幹線道路である半面、白石峠区間は急勾配区間が連続し、線形不良箇所も多く、速度低下やスリップ事故が発生。区間内の白石トンネル(区間長808㍍)は幅員が狭く、入り口がカーブとなっており、大型車同士のすれ違いが困難など課題が山積していた。
 県は路線の役割として、重要港湾である大船渡港と中枢中核都市である盛岡市や、産業集積が進む県南地区を結ぶ物流機能を強調。同港における昨年度のコンテナ貨物取扱量割合を地域別にみると、北上市や奥州市などの県南地区が39%、盛岡市や花巻市などの県南地区が33%となっている。
 また、気仙地域の患者のうち、地域内で入院が完結しているケースは6割にとどまり、残りは盛岡などで入院。国道107号は、内陸への救急搬送でも利用頻度が高い。
 さらに、「いわて県民計画」「県国土強靱化地域計画」に基づく政策目標や、県が掲げる災害に強い幹線道路の整備推進にも合致。気仙3市町や関係団体による整備促進に向けた強い要望も挙げる。
 自然環境等への配慮では、振興局で実施している公共事業等にかかる希少野生動植物調査検討委員会に付議し、有識者らの助言を受ける方針。整備にかかる費用便益分析の結果や、代替案比較でも事業効果が高いとしている。
 大船渡〜遠野の区間などは現在、一般広域道路として位置づけられているが、今年6月にまとめた県新広域道路交通計画では、広域道路ネットワーク路線に「(仮称)大船渡内陸道路」が構想路線として新たに盛り込まれ、将来的な高規格道路としての役割が期待される。個別路線の調査には着手していないが、さらなる安定走行につながる今後のネットワーク整備の動きにも注目が集まる。