〝三陸色〟の革製品づくりへ 大船渡の女性ら受注生産 クラウドファンディング生かし
令和3年8月29日付 7面
東日本大震災以降、大船渡市猪川町の長洞応急仮設団地で行われた体験会を契機とした革製品づくりの活動が広がり、インターネットによるクラウドファンディングを活用して受注生産に取り組むことになった。楽しみながら技術を学んだ市内在住の女性たちによる作業は、10月から本格化する見込み。女性たちは震災10年が過ぎても途切れぬ絆への感謝を寄せるとともに、豊かな三陸を表現した色鮮やかな革製品による地域の魅力発信も見据える。
仮設団地の交流活動が原点
指導会は、東京都にあるレザーバッグブランド「ayay new york tokyo」(アイアイニューヨークトウキョウ)のデザイナー・逢坂(旧姓・依田)綾さんらの訪問がきっかけとなった。平成24年1月、復興支援の一環で仮設住宅内でできる革素材を使った手づくり製作を打診したところ、住民の関心を集め、翌月に実現した。
逢坂さんが持ち寄ったのは、ブランド内で取り扱う「手縫いキット」。マンション暮らしの首都圏在住者をはじめ、小スペースや少ない道具でも製作できるよう考案された。住民は革製品独特の肌触りなどを楽しみ、指導会後も逢坂さんとの交流が続いた。
都道府県の花・鳥・木のレザーアートをあしらった手縫いのバッグづくりなどに励み、平成27年には県内外で個展を開催。緻密な手仕事が光る作品を並べ、関心を集めた。
逢坂さんは新型コロナウイルスの影響が続く中、創作活動のあり方を見つめ直し「細かい作業が得意な日本人特有の技術を生かし、つなぎ合わせる活動を進めたい」と考えるようになった。新たな展開に向け、SNSやオンライン会議システムを生かして再び大船渡の「縫い手」に声をかけた。
製作は平成27年の個展に向けて製作した女性4人に加え、新規の参加もあり、6、7人程度となる見通し。
約10年にわたり逢坂さんと交流がある女性の1人は「今もまだ、私たちを忘れていないのがうれしかった。製作に出合い、心にうるおいができたと思う。震災を通じた絆や技術への感謝に加え、注文してくれた人の思いも想像しながら手を動かしたい」と語る。
革製品はコースターやサンダル、コインケース、キーホルダーなど7種類を用意。すべて「編み革」を使用し、手作業で進める。「ツバキ」「ツツジ」「カモメ」など三陸の自然美を表現した5色を定番カラーとし、どの製品も華やかな仕上がりとなる。
ハンドメイド品に特化したクラウドファンディングで10月まで受け付け、プロジェクト名は「メイドイン大船渡 編み革に思いを込めて」(www.creema-springs.jp/projects/
ayay)。製品だけでなく、大船渡の住民らが製作に携わるようになった経緯や、三陸の自然の魅力も伝えている。
逢坂さんは「個人的に大好きな岩手県であり、特に三陸の魅力を日本全国に伝えられる機会になれば。将来的には、大船渡に行かなければ触れることができない商品になって、多くの人々が訪れるきっかけにもなれば」と話す。