年間2400〜3300万円圧縮 行政事務の包括業務委託 効果額推定 一般質問で当局答弁
令和3年9月8日付 1面
陸前高田市議会9月定例会は7日、通告に基づく一般質問が始まった。初日は蒲生哲(新志会)、及川修一(無所属)、大坪涼子(日本共産党)、松田修一(碧い風)の4議員が登壇。市当局は一昨年度から導入している行政事務の包括業務委託について、令和元年度、2年度の2カ年は年間約2400万円〜約3300万円の削減が図られているとの推定額を示した。
行政事務の包括業務委託や指定管理者制度などアウトソーシング(外部委託)について取り上げたのは、及川議員。「成果と課題、市民の反応をどのように認識しているか」と尋ねた。
行政事務の包括業務委託は、復興期間終了後の本年度以降を見据え、より効率的な財政運営と一層の人件費圧縮を図るために平成31年4月に導入。市職員が直接担わなければいけない内容を除く窓口業務などについて㈱共立メンテナンスに委託しており、令和元年度から本年度まで年間60〜70人分の業務を担っている。
人件費の縮減額は、元年度約2400万円、2年度約3300万円と推定しており、戸羽良一総務部長は「一定の成果が得られていると認識している。接遇研修会を定期的に開催しており、市民からは庁舎の窓口業務に対し、好意的な意見が寄せられている」と答弁した。
指定管理者制度を導入している市立図書館、市民文化会館の2施設について、戸羽部長は「図書館は利用時間を延長したり、司書資格者を1人増やすなどのサービス向上策に取り組んでおり、今後は利用者アンケートを行いニーズ把握に努めたい。市民文化会館は、コロナの影響で利用制限が長期化しているが、これまで他の市町村に足を運ばなければ鑑賞できなかったイベントが開催でき、多くの市民から『満足している』などの声が寄せられている」と述べた。
トップ登壇の蒲生議員は、今夏の観光地入り込み数と秋以降、または新型コロナウイルス収束後の観光の展望について質問した。
7、8月の入り込み数は、高田松原海水浴場が約1万3500人、道の駅「高田松原」が前年同期比22%増の11万5600人。コロナ禍で夏を彩る主要行事の中止が相次いだ一方で、市内全体の入り込み数は増加したという。
戸羽太市長はこれらの状況を説明したうえ、「現在のコロナ感染状況から早期の収束は見通せない状況にあるが、収束後に合わせ、観光で訪れた旅行者に対し、観光周遊パスポート『高田旅パス』を昨年度に続いて無料で発行する。この事業では地域経済活性化につなげるため、新たに市内登録店舗、宿泊施設でも利用できる市独自のクーポン券も発行することとし、今定例会に補正予算を計上している」と述べた。
大坪議員は、学校現場における新型ウイルス感染防止対策に関連し、児童・生徒や教職員らのワクチン接種の考え方と進ちょく状況に加え、学校行事などを安全に行ううえでの課題、注意点を尋ねた。
市は8月に12〜15歳の約500人に接種券を発送。学校現場での集団接種は難しいとの文科省の見解を踏まえ、市内7医療機関で行われている「個別接種」、もしくは保健福祉総合センターを会場とする「集団接種」を保護者の判断で受けることとし、集団接種は9日から12歳以上の全年代を対象に予約を受け付ける。
小中学校の教職員ら約190人のコロナワクチン接種状況は、全体の9割以上が予約完了、または1回目の接種を済ませ、80人超が2回の接種を終えた。
山田市雄教育長は「接種しないことに対する差別や誹謗(ひぼう)中傷が起きないように、また児童・生徒、教職員へのワクチン接種がスムーズに行われるよう努める」としたうえ、「運動会や学習発表会などの行事は有意義な教育活動だ。感染へのリスクを理由に一律に中止することはせず、教育的意義や児童・生徒の心情を考慮し、適切な感染防止対策を講じたうえで実施のあり方を検討している」と答えた。
松田議員は、国際リニアコライダーの誘致について、「北上山地(北上高地)への誘致の実現可能性をどう考え、将来における市益を考慮してどのようなビジョンを描いているか」と当局の見解を聞いた。
戸羽市長は「北上山地の岩手県と宮城県にまたがるエリアが建設候補地として最適であるとの評価結果は、世界の研究者からも支持されており、今後実現に向けて前進していくものと期待している」とし、「市民や民間企業が一体となった誘致活動がより活発化することを期待している。市としても各種連携組織や関係自治体との情報共有などを通じて、誘致実現に向けた取り組みを進める。実現後の当市における役割に応じた受け入れ活動の検討も進めていきたい」と述べた。