子どもらの〝遊び場〟解体へ 朝日のあたる家のモニュメント 木材再利用しベンチに

▲ 12月の解体を予定しているモニュメント「虹の架け橋」

 東日本大震災後に子どもらの遊び場として親しまれてきた、陸前高田市米崎町のコミュニティー施設・朝日のあたる家敷地内のモニュメント「虹の架け橋」が、12月以降解体される予定だ。モニュメントは、津波で3人の子どもを失った宮城県石巻市の㈱木遊木(もくゆうぼく)代表・遠藤伸一さん(52)が製作したもので、解体後は、木材を再利用して屋根付きベンチを設置する。遠藤さんは「震災後に寄せられた多くの人の思いが、次世代につながる場所になってほしい」と願う。

 

製作の遠藤さん(石巻)思い寄せる

 

 モニュメントは、被災により陸前高田市内に子どもの憩いの場が少なかったころ、震災救援事業の一環で朝日のあたる家を建設した社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団から依頼を受けて製作し、27年に完成した。
 幅約10㍍、高さ4・5㍍で、耐久性に優れたヒノキとウリンを使用。滑り台や展望スペース、一休みできるベンチなどが設けられ、「遊べるモニュメント」として多くの親子らに親しまれてきた。
 遠藤さんは、毎年朝日のあたる家を訪れ、モニュメントのメンテナンスを実施。人に害のない防腐剤塗料を塗ったり、子どもがけがをしないようささくれを削るなど愛情を注いできた。
 朝日のあたる家のスタッフらも「たくさんの子どもたちが利用し、笑い声がこだますると、地域の人たちの笑顔も広がった。思い出がいっぱいつまった場所」と懐かしむ。
 解体は、震災から10年が経過し、市内各地に公園や遊具施設が完成している状況から、同事業団が「一定の役割を果たした」として決定。一方、震災後の記憶やモニュメントに寄せられた人々の思いを残し、地域コミュニティーに貢献できるものを設けようと、解体された木材でベンチを製作することが決まった。
 モニュメントは先月末で利用を停止し、今月に入ってから閉鎖された状態。解体作業は木遊木が12月から始める予定。
 解体後に製作するベンチは幅6㍍ほどで、日よけの屋根をつける予定。朝日のあたる家を運営するNPO法人福祉フォーラム・東北スタッフの意見を取り入れ、「地域住民の思い出の場があった証しを」と、モニュメントの名前「虹の架け橋」が表記された看板は残すことにした。
 「虹の架け橋」という名前は、遠藤さんが亡くなった自分の子どもたちのことを思い、自宅跡地に建設したモニュメントの名称と同じ。「震災による悲しみの涙、涙雨の後に出た虹が多くの人と人の思いをつないだ」ということから付けられ、被災を受けた石巻、陸前高田両市がつながる架け橋になることも願った。
 遠藤さんは「(犠牲となった)子どもも虹も手にとることはできないが、これからつながる人たちとまちが復興していくきれいな光景を見ることはできる。モニュメントはベンチに形を変えたあとも、震災後に地域の人たちが歯を食いしばって頑張ったこと、たくさんの人たちが応援してくれたことを、これからを生きる子どもたちに伝えていく場所になってほしい」と話している。