震災慰霊の場「検討中」続く 整備時期・場所を巡り論戦 市議会9月定例会一般質問

▲ 初日は5議員が登壇した一般質問

 大船渡市議会9月定例会は8日、通告に基づく一般質問が行われ、いずれも光政会の佐藤優子、小松龍一、菅原実、森亨、伊藤力也の5議員が登壇した。東日本大震災犠牲者の慰霊碑建立のあり方について、市当局はその必要性を掲げながら「整備方針を検討する」と答弁。整備に向けて、利便性や防災意識高揚といった観点にも触れた一方、具体的な場所や時期に関しては明言を避けた。


利便性や防災意識高揚の観点も

 慰霊碑のあり方で論戦を交わしたのは、小松議員。「この10年間、なぜ建立してこなかったのか」「これから建立する考えはあるのか」などと迫った。
 戸田公明市長は犠牲者や遺族の心情に向き合う施設であるため、慎重に対応してきた経緯を説明。令和元年度に(仮称)防災学習センター等整備検討官民会議から「慰霊碑を設置する必要があるが、場所や仕様は引き続き検討が必要」と提言を受けた点にも触れ、整備に向けた検討を重ねている現状を示した。
 さらに、江刺雄輝総務部長は「記憶と教訓を風化させることなく後世に伝え、防災意識の高揚を図ることも重要。防災と復興の誓いを新たにする祈りと誓いの空間として整備すべき」と答弁。市外からの来訪者にも分かりやすいBRT大船渡駅から徒歩圏内で、復興の様子や海を一望できる場所が望ましいとした。
 再質問で小松議員は「震災から10年をとっくに過ぎている。今も検討しているのは情けない。もっと早くすべき」と批判。江刺部長は「設置場所や設置時期も含め方針をできるだけ早く固め、各種計画や財政との整合性や庁内調整を図り、早期に着工したい」と理解を求めた。
 トップ登壇の佐藤議員は、地域力を学校運営に生かす観点から、来年度の設置が努力目標となっているコミュニティ・スクールについて質問。「これまで以上に地域が行政、学校などの関係機関とともに進める事業が増える」とし、地域住民らに市の方向性を分かりやすく示す重要性を訴えた。
 新沼徹協働まちづくり部長は、市が昨年秋に、新たに地区コミュニティーの創造指針を策定した動きに言及。そのうえで「共助の原動力となる住民自治機能の再編・強化に向けた施策を推し進めている。具体的な取り組みは、地区ごとに協議を重ね、実情に応じた運営を見定めるプロセスが欠かせない。市全体で協働のまちづくりを進めるという強い意識を共有し、持続可能な地区づくりに取り組む」と述べた。
 菅原議員は、吉浜地区太陽光発電整備事業に関する問題を追及。事業者が昨年12月に経済産業省に出していた変更認定申請を取り下げた動きに迫った。
 戸田市長は「同一地番に複数の発電設備を設置することは認められないとする省令の認定基準に照らし、同一地番内に大船渡第一、第二太陽光発電所を設置するとの計画変更は認定できないとの指摘を受け、調整後に、変更認定申請を行うと聞いている」と答弁。志田努副市長は「市は行く末を見守る立場だが、事業者とすれば国との審査がまだ途中にある段階で、冷静に対応しているのではないか。大きくみれば、まだ審査の過程にあるのではないか」と語った。
 森議員は、市営建設工事のあり方を取り上げた。本年度も残る復興工事の内容と見通しをただした。
 戸田市長は本年度、中赤崎地区スポーツ交流ゾーンなど整備復興関連工事5事業、総額4億9000万円分すべてが、すでに完了か、年度内に終える見通しを説明。いずれも市内の建設業者に発注し、地域経済活性化に寄与している点も強調した。
 伊藤議員は、本年度を初年度とする新総合計画に基づく行政運営の推進について質問。前計画での検証で「人員削減に加え、時間外勤務命令の制限や休暇取得の推進を図る必要性があるが、業務改善・事務改善が進まず、職員への負担が増加している」との指摘に着目し、現状への見解などを求めた。
 江刺部長は「事務状況は、震災以降の10年間は復興の取り組みを最優先に進めた。その結果、被災していない自治体で取り組みを進めてきた分野で後れをとった面があり、事務効率が良くない状況の一つになっている」と答弁。職員数に対して仕事量が多く、負担加重につながってきた点にも言及し、改善を進める考えを示した。