カキ漁師の道 一歩ずつ 漁業にひかれ移住・就業 東京出身の須田さん(別写真あり)

▲ 一人前の漁師を目指し、仕事に励む須田さん

「一人前目指し頑張る」と決意

 

 東京都出身の須田大翔さん(23)が、陸前高田市でカキ養殖業の道を歩んでいる。自分一人の力量が仕事の成否につながる漁業の可能性を魅力に感じ、昨年春、縁もゆかりもない同市にやってきた。広田湾漁協(砂田光保組合長)の組合員となり、修行のため受け入れてくれた地元のベテラン漁師から漁船も譲り受けた。一人前の漁師を目指し、日々浜で汗を流している。

 須田さんは、新規就業者を支援する同市の「がんばる海の担い手支援事業」の補助金を受けることが決まり、10日、小友町の同漁協米崎小友支所で授与式が行われた。目録を手渡した砂田組合長は「漁業者を代表して心から歓迎する。若い視点を生かして漁業の魅力を発信していってほしい」と激励した。
 海などの自然が好きで、職人気質のイメージがあった漁業に関心を持っていた。大学4年生だった一昨年9月、都内で開かれた漁業就業フェアに参加。25年ほどカキ養殖を営む小友町の藤田敦さん(56)と出会い、話を聞く中で養殖業にひかれた。
 旅行会社の就職内定を辞退し、漁業の道へ進むことを決めた。反対した家族にも覚悟と熱意を伝え、理解してもらった。
 大学卒業後の昨年4月、藤田さんのもとで修行を開始。今年3月までの1年間は県のいわて水産アカデミーにも参加し、基本的な知識や技術の習得に励んだほか、船舶の操縦免許などを取得した。
 漁業の世界に飛び込んで約1年半。「仕事は全部の作業が大変だが、やりがいがある。養殖棚につるした種が成長したのを見たときが一番うれしかった」と、はつらつと語る。
 地域の中核的漁業者らでつくる県漁業士会大船渡支部の支部長を務めたことがある藤田さんも、真剣に仕事に当たる弟子に期待をかける。小友地区のカキ養殖漁業者は、震災前の3分の1以下の9人。「担い手減が深刻だ。そうした中で浜に興味を持ってもらいうれしい」と語る。
 今年6月に新造船に乗り換え、それまで使っていた漁船を須田さんに譲った。「頑張った分だけ報われる仕事。収入の喜びを早く味わってほしいから」と、自身が手掛ける養殖施設の一部も分け与えた。
 来月から今季の収穫が控えており、「水揚げが楽しみ」と須田さん。「まだ資機材もそろっておらず、学ぶべきことが多いが、一人前の生産者となれるよう頑張りたい」と決意する。