新型コロナウイルス/換金総額3億円を突破 「ふるさと振興券」開始1年 1万円分を全世帯配布

▲ 11月末まで利用できる「第3弾」の地域振興券

 大船渡市による新型コロナウイルスの独自経済対策で、昨年9月から実施している「ふるさと振興券」の換金額が、今月までの累計で3億円を突破した。全世帯に1万円分を配る事業で、昨年9月に第1弾、今年4月に第2弾を行い、いずれも換金率は98%台に。先月配布した第3弾分も、第2弾を上回るペースで消費が進む。振興券を利用できる店舗からは「続けてほしい」「地元消費につながっている」といった声が寄せられるとともに、さらなる効果拡大に向けた工夫を求める意見も出ている。

 

第3弾の消費利用も好調

 

 ふるさと振興券は、新型ウイルスの影響を大きく受けている飲食店や小売業、サービス業の売り上げ確保に向けた消費喚起が目的。市内全世帯が対象で、1世帯当たり1万円分(500円券20枚)を配布する。事業運営は大船渡商工会議所が委託を受けている。
 配布対象者は、市内全世帯で約1万5000世帯。現在、利用できる店舗は430店舗以上で、飲食店や小売店、サービス業が対象で、運輸業や理美容、ガソリンスタンド、薬局も加盟している。
 盛町のサン・リアや大船渡地区に整備された商店街の各専門店でも利用できるが、スーパーやドラッグストア、ホームセンターなど、店舗面積が500平方㍍を超える大型店は対象から外れた。
 第1弾は昨年9月から10月にかけて配達し、12月末が有効期限。第2弾は今年4月に配り、7月末まで各種購入・サービスで利用できた。第3弾は8月に各家庭に届き、11月末までとなっている。
 第1弾は1億4720万円分を発行。各店舗が消費者から振興券を受け取り、金融機関で換金したのは1億4442万円で、換金率は98・1%に達した。第2弾は1億4808万円の発行で、1億4545万円が換金され、換金率は98・2%だった。
 第3弾分も、先月までの換金額が2458万円に。第1弾からの累計では、3億1000万円を超えた。
 第2弾では、配布初月の4月の換金額は約1800万円だったことから、第3弾はこれまでよりも消費ペースが早い。地域住民の積極的な活用がうかがえる。
 8月は岩手県内でも感染者数が急増し、県独自の非常事態宣言が出され、不要不急の外出自粛の呼びかけも。消費活動にも影響が及ぶ中、地元経済の下支えに一定の効果をもたらしている。
 また、これまでと同様に市内のタクシー利用も可能。市では、ワクチン接種時にかかる移動費支援としても位置づけている。
同商議所は東日本大震災前から地域共通商品券を発行し、約7割が市内の大型店に集中する傾向があった。一方、ふるさと振興券は小規模事業者に限定。地域商品券は換金時に3%の手数料を徴収するが、振興券は無料としている。
 新型ウイルスの影響で1年以上にわたり来客減などの影響が続く中、同商議所には加盟店から「売上げや来客数の増加、下支えにつながった」といった手応えが寄せられる。客単価向上や消費拡大につながったとの見方も多い。
 業種を問わず「継続して行ってほしい」「消費者の市外流出防止につながっている」「個人経営の店にはありがたい」といった声が目立つ。とくに厳しい影響を受ける飲食店からも「換金手続き後、すぐに入金してもらえる」「普段訪れない人の来店もあった」など、好意的な反応が多いという。
 一方で「コロナ禍でもあり、夜の時間帯に営業している飲食店で利用しようという人が少ないのではないか」といった指摘も。同商議所などでは、第3弾分の早期利用による経済循環に期待を込めるとともに、これまでにはない消費行動の創出に加え、テークアウトの充実など店舗側の新たな展開にも期待を寄せる。