陸上展示へ〝最後の出航〟「気仙丸」が湾内を移動 きょう設置作業(別写真あり)

▲ 台船のクレーンでつり上げられる前に湾内に着水した「気仙丸」

 大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)が所有する木造千石船の復元船「気仙丸」は20日、大船渡市大船渡町のおおふなぽーと付近への移設に向け、改修が行われた赤崎町の㈲大船渡ドック(中野利弘代表取締役)から台船に乗せられて湾内を移動した。昨年8月に蛸ノ浦漁港からえい航されて以来、約1年ぶりに湾内に着水。その後は台船のクレーンがつり上げて台船に移し、茶屋前岸壁に運んだ。区域内での設置作業は21日に予定している。

 

おおふなぽーと付近に

 

 移動作業には大船渡ドックや台船を運航する㈱佐賀組、建造や長寿命化作業に携わった気仙船匠会のメンバーらが参加。台船には船外での展示を予定している帆柱などが先に積まれ、ドック内の引き上げ船台から気仙丸がすべるように海に入っていった。
 その後、大型クレーンでつり上げられて宙に浮き、台船に乗せられた。作業にあたった船匠会副会長の菅野孝男さん(78)=陸前高田市気仙町=は「きょうは朝から緊張しっぱなし。新しくつくった部材は100%の自信があるが、取り換えていない部材は30年間でどれほど傷んだか予想がつかない。台座への据え付けが終わるまで、油断できない」と話していた。
 21日は茶屋前岸壁で気仙丸をクレーンで引き上げ、設置作業に入る。展示場所は、夢海(ゆめみ)公園にも近い県道と市道の交差点付近。市と土地の賃貸借契約を交わし、船首を交差点側とする陸上展示に向けた工事が進められてきた。
 設置後も一部で、長寿命化に向けたコーティング作業を計画しているが、道路沿いなどからは眺められる形になるという。歴史や由来を伝える説明板設置を経て、10月上旬に現地で記念式典を開催できるよう調整を進めている。
 平成3年に完成した気仙丸は、江戸時代に気仙と江戸、九州地方の交易に活躍したとされる千石船の歴史を伝える復元船。長さ18㍍、幅5・75㍍、高さ5㍍に及ぶ。
 近年は老朽化などで腐食が進行していたことから、陸上展示の方針を決め、昨年8月に係留していた赤崎町の蛸ノ浦漁港から大船渡ドックにえい航。その後は液体ガラス塗装が施されたほか、気仙船匠会のメンバーらによる部材新調も進められた。
 海上での役割を終え、移設後は中心市街地の〝顔〟としての役割を担う。今後は観光資源として建築技術や交易文化を伝える情報発信のあり方が注目される。