ノリ陸上養殖施設が稼働 理研食品㈱が米崎町の脇之沢漁港に整備(別写真あり)
令和3年10月5日付 2面
海藻関連製品の製造などを手掛ける理研食品㈱(本社・宮城県多賀城市、渡辺博信代表取締役社長)が陸前高田市米崎町の脇之沢漁港で整備を進めていたスジアオノリの陸上養殖施設が完成し、4日、本格的に稼働を開始した。天候や海水温に左右されず、海上よりも作業しやすいのが利点で、安定生産に期待がかかる。種苗生産から養殖水槽での生育・収穫を一貫して行い、当面は年間5㌧の生産を目指す。
同日は現地で竣工式が行われ、同社や親会社の理研ビタミン㈱(山木一彦代表取締役社長)、市、広田湾漁協などの関係者ら約30人が出席。神事後、戸羽太市長は「陸上養殖という新しい形の第1次産業の拠点が完成した。陸上養殖は経験のない人でも漁業に携わることができ、安定生産も見込まれる。雇用の場にもなってほしい」と期待を述べた。
陸上養殖施設を含む理研食品の「陸前高田ベース」は、5月に着工。設計・施工は地元の㈱長谷川建設(長谷川順一代表取締役社長)が請け負った。
養殖水槽はポリプロピレン製で、大中小サイズの計35基を整備。最も大きな水槽は直径8㍍、高さ0・8㍍の25基で、ノリの長さなどに応じて小型から中型、大型の水槽に移し替えながら生育を促す。
敷地内には鉄骨造平屋の管理棟1棟も整備。種苗生産やノリの洗浄・脱水、乾燥を行う。
種苗の生産は今月下旬ごろから行い、それまでは同社の研究施設から調達する。収穫までの生育期間は2カ月程度を見込み、新規雇用4人を含む従業員7人が業務に当たる。
総工費は2億7200万円で、生産量は乾燥品で年間5㌧を計画。令和5年度には水槽を倍の70基に拡大する2期工事を行い、最終的には年間10㌧の生産を目指す。
陸上養殖は、海況に左右されずに生産でき、海上と違って安定した平地で作業できるのがメリット。スジアオノリは、香りの強さと色の良さで高級品として取引されるが、地球温暖化などを背景に国内生産量が減少しており、同社は5年前から、高知大学との共同で、陸上養殖の事業化に向けた研究を続けてきた。
海水の取水が可能な広い事業用地を探していた中、市や広田湾漁協の協力で同市への進出が決まった。市内で陸上養殖を行うのは2社目。
渡辺代表取締役社長は「立派な養殖事業所ができたと自負している。ワカメ以外の海藻の知名度が低かったのが弊社の長年の課題だった。スジアオノリの陸上養殖を成功させ、ノウハウを積み上げてほかの海藻にも転換を図っていきたい」と意気込む。