東日本大震災10年/市管理6漁港の復旧・復興事業が完了 漁業振興、防災の基盤整う 計368億円の大規模工事
令和3年10月7日付 1面

被災の防潮堤、岸壁など整備
6日に現地で完成検査が行われた
東日本大震災で被災し、陸前高田市が進めてきた市管理6漁港の漁港施設や防潮堤の復旧工事が、6日までにすべて完了した。全体で約368億円が投じられ、津波で破壊された岸壁や防潮堤の復旧、かさ上げなど大規模な工事を展開した。間もなく震災発生から10年7カ月。漁業振興の拠点、安全・安心の基盤がようやく整い、市は各施設の適切な維持・管理などにかじを切る。
市が管理している漁港は、▽要谷▽脇之沢▽両替▽大陽▽根岬▽只出──の六つ。震災でいずれも壊滅的な被害を受け、市はがれき撤去や国の災害査定を経て復旧事業に着手した。
防潮堤などを整備する「漁港海岸」の復旧費は、6カ所合わせて約280億円。防潮堤は数十年から百数十年に1度程度の頻度で発生する津波(L1津波)から後背地を守る高さを基本に整備した。
6漁港海岸のうち、要谷、両替、大陽の3漁港海岸が昨年7月に完成。以降、根岬、只出、脇之沢の順に整備を終えた。
最後となった脇之沢の防潮堤の復旧延長は、市管理分としては最大規模の約1・9㌔。平成28年3月に着工し、防潮堤の高さは震災前よりも6・35㍍高いT・P(東京湾平均海面)12・5㍍。事業費は約150億円となった。
車などの通行口となる陸こうは4基設け、このうち2基は自動閉鎖システムを導入。同システムは1月から運用されている。
当初は、国の「第1期復興・創生期間」の昨年度末までの完成を計画していたが、防潮堤東端の地盤が軟弱で、基礎部の補強工事が必要となったため遅れが生じ、工事用の仮設道路撤去などが9月末にずれ込んだ。今月6日に現地で完成検査が行われ、施工業者から引き渡しを受けた。
防潮堤の高さは、広田湾奥にある要谷と両替もT・P12・5㍍。大陽は同8・8㍍、只出は同10・9㍍で、それぞれL1津波を防ぐ海岸別の高さに設定した。根岬のみ地元との協議を踏まえ、震災前と同じ同6・3㍍に原形復旧した。
岸壁や防波堤などを整備する「漁港災害復旧」の総事業費は約68億円。脇之沢を除く5漁港は平成28~30年に完成した。脇之沢は、防潮堤の整備の遅れに伴い、一部工事が9月末までかかった。
震災の影響で地盤沈下した漁港用地のかさ上げ工事や漁具置き場・倉庫も整備し、事業費は約17億円。国の復興交付金を充てた。広田地区、矢の浦地区では漁業集落排水施設の整備も行われた。
市水産課の菅野泰浩課長は「関係者、市民の協力のおかげで事業を完了することができた」と感謝し、「施設を末永く使ってもらえるよう適切なメンテナンスを実施し、安全・安心で、使いやすい漁港を目指していく」と見据える。
気仙では、大船渡市が今年3月までに、被災した市管理16漁港の復旧をすべて完了させた。