秋サケ 今季も厳しい出足 不漁の昨季を下回る 大船渡魚市場の9月末実績

▲ 大船渡市魚市場に水揚げされた秋サケ。数量は前年を下回るペースで推移している=6日

 気仙沿岸における今季の秋サケ漁や河川捕獲は、記録的な不漁に終わった一昨年、昨年を下回る厳しい水準で推移している。県のまとめによると、大船渡市魚市場の定置網漁による9月末までの累計水揚げ量は28匹で前年同時期の2割にとどまっているほか、同市の盛川漁協では今月7日にようやく、採卵用のサケを初めて確保した。水産・漁協関係者は危機感をあらわにしている。

 

採卵用の河川確保も苦境


 市魚市場では6日、磯建網漁による水揚げ約30㌔のみで、主力の定置網漁ではゼロ。先月から定置網にもかかるようになってはいるが、買い受け人からは「昨年のこの時期には、もっと出ていた。今年は特に遅い」といった声が聞かれる。
 県農林水産部水産振興課が発表した9月30日現在の秋サケ漁獲速報によると、県全体の沿岸・河川累計捕獲数は1万3582匹。前年同期を27・2%上回っている。
 しかし、沿岸の累計漁獲量は9070匹(重量24・51㌧)どまり。前年度は9699匹(28・23㌧)で、6・5%下回った。
 重量は過去5年平均(185・51㌧)の13・2%にとどまる。金額も2411万円と低調で、同平均(1億4588万円)の16・5%となっている。
 漁獲数は県北の野田、久慈だけで約7000匹を占める。田野畑以南では、前年を大きく割り込む実績が目立つ。
 大船渡市魚市場への水揚げ数は28匹(0・08㌧)で、前年同期比107匹(79・3%)の減。1㌔当たりの平均単価は1205円で、前年度同期を12円(1%)上回っている。吉浜、浦浜、綾里、盛、気仙の各河川では捕獲されなかった。
 かつては1万㌧を超える年もあった同市魚市場への水揚げ量は、平成27年度が770㌧で過去最低となり、28年度はそれをさらに下回る535㌧にまで落ち込んだ。29年度は597㌧と前年を上回ったものの、30年度は376㌧に下がり、令和元年度は数量が前年度比78・7%減の79㌧と記録的な不漁に終わった。
 昨年度は同31・1%増の105㌧、金額は9988万円と持ち直したが、10億円台で推移していた震災前には遠く及ばなかった。
 県水産技術センターが発表した本年度の秋サケ回帰予報によると、回帰数量は東日本大震災前の5カ年平均(平成18~22年度)の7%と、令和元年度以降の最低水準が継続する見込み。回帰時期の見込みは、11月下旬~12月上旬が中心となっている。
 秋サケの不漁は、漁協経営や水産加工業などにも深刻な影響を及ぼす。また、厳しい財政状況の中で増殖事業を展開する組合組織への打撃も大きい。
 盛川漁協では例年、10月に入れば採卵事業が始まるが、今季は6日まで1匹も確保できなかった。7日に16匹が入り、川口橋付近では群れも確認できるようになったというが、例年にはほど遠い状況。佐藤由也組合長は「海の網に入っていないのだから、川にも戻ってこない。昨年が底と思っていたが、今年はもっと悪い。温暖化をはじめ気候変動の影響が大きいのだろう」とため息をつく。
 昨年度は1350万匹の放流を計画していたが、山形県での確保分を入れても半数の約650万匹にとどまった。今年も計画量は同程度を掲げるが、確保のめどは立たない。
 佐藤組合長は「今季に関してはサケが来るのを待つしかないが、増殖事業を根本から変えなければいけない時期に来ているのではないか。サケはかつて、収益の柱だったが、今はマイナスの状態。国の水産政策審議会でも実情を訴えたい」と話す。