東日本大震災10年/「東北応援」一区切りに 栃木県などのおはなし隊 平成23年から10回目の公演(別写真あり)
令和3年10月19日付 7面

栃木県のNPO法人表現遊び開発教育研究所マム(加藤美智子理事長)による「物語の世界へようこそ!わくわくおはなし隊IN大船渡」は17日、大船渡市大船渡町のおおふなぽーとで開かれた。東日本大震災の発生後、「東北応援」として被災地で開催しており、10回目となった公演では加藤理事長(64)ら栃木、静岡両県の5人がパネルシアターや人形劇を通じ、子どもたちに笑顔と元気を届けた。おはなし隊の東北応援公演は今回で一区切りとなるが、メンバーらはこれまで築いた絆を大切に、今後も東北との交流を継続していくとしている。
築いた交流の継続誓う
同法人は、栃木県内のおはなしや人形劇の団体と「おはなし隊」を結成し、震災後の平成23年から東北の被災地で応援公演を展開。気仙では同年10月の大船渡市公演を皮切りに、陸前高田市を含む各地を毎年訪問して楽しいステージを届け、大船渡市のNPO法人おはなしころりん(江刺由紀子理事長)など地元団体とも交流を深めてきた。
「震災から10年までは応援公演を」と継続し、本来であれば昨年が10回目の実施だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて見送りに。今年は規模を縮小し、子どもゆめ基金読書事業の助成を活用して大船渡市と宮城県石巻市で2年ぶりに公演を企画した。
今回は、栃木県鹿沼市から加藤理事長と森田万智子さん(61)、那須塩原市の鈴木克子さん(62)、香沙音さん(37)親子、静岡県静岡市の丹羽千恵子さんが訪問。おはなし隊と大船渡を結んだNPO法人ウェイ(栃木県益子町)の青木治理事(63)らも同行した。
おおふなぽーとには、親子連れなど35人が来場。冒頭、加藤理事長が「震災があったあの年から年に1回、必ず東北に来ておはなしをプレゼントしてきた。いよいよ10回目となり、今年で一つの区切りとなるが、いろいろなおはなしを楽しんでほしい」とあいさつした。
森田さんのエプロンシアター『ブレーメンの音楽隊』で幕を開けると、加藤理事長は四角形に隠れた動物たちをクイズ形式で紹介する演目など二つのパネルシアターを展開。鈴木さん親子は、秋を彩る赤と黄の2色にちなんだ人形劇を繰り広げた。
「人形劇団わにこ」として活動する丹羽さんは、かわいらしい海の生き物が次々登場する人形劇「さかなちゃん」を披露。子どもたちはステージの呼びかけに元気に反応したり、人形の動きを熱心に見つめるなどして、おはなしの世界を満喫した。
おはなし隊からおはなしころりんに対し、絵本と人形の贈呈も行われた。
これまでも大船渡に足を運んでいるメンバーらは、地域住民らとの交流に充実した表情を見せた。加藤理事長はこの10年を振り返りながら、「東北応援は一区切りになるが、コロナ禍でよりこのような活動が必要だと感じている。さまざまな人々との絆を失わないよう、今後は違う意味での支援として続けていきたい」と力を込めた。
江刺理事長(59)は「長きにわたって支えてくださったことは、私たちの力になっている。同じ目的を持つ団体として励ましを受け、心から感謝している。この交流を今後とも継続したい」と話していた。