2021衆院選岩手2区/12日間の舌戦幕開け 予想の3氏が立候補
令和3年10月20日付 1面
第49回衆議院議員総選挙は19日に公示された。気仙2市1町を含む岩手2区には、届け出順に立憲民主党新人の大林正英氏(57)、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」(NHK党)新人の荒川順子氏(68)、自民党前職の鈴木俊一氏(68)=9期=の3氏が立候補した。各氏は街頭や選挙事務所前で第一声を上げるなどし、12日間にわたる選挙戦の幕開けを告げた。投票は31日(日)に行われ、即日開票される。
県内選挙区への立候補届け出は午前8時30分から盛岡市のサンセール盛岡、同10時30分以降は県庁の県選挙管理委員会事務局で行われ、午後5時に締め切られた。2区は立候補が予想された3氏以外に届け出はなく、三つどもえの選挙戦に突入した。
大林、鈴木両氏は地元選挙事務所前や街頭で、それぞれ第一声を上げた。集まったマスク姿の支持者たちを前に、国政とのパイプ役としての決意や主要政策などを力強く訴えたあと、気勢を上げて選車に乗り込んで遊説に出発した。選挙区内に拠点を置いていない荒川氏は、インターネットなどを通じて訴えを広げたいとしており、この日は届け出後に報道陣の取材に応じたあとに気仙地区を訪れたが、マイクを握っての街頭演説は行わなかった。
衆院選は、自民、公明の与党が定数3分の2超の大勝をおさめた平成29年10月以来4年ぶり。解散から投開票までわずか17日間という〝短期決戦〟で、小選挙区(289議席)と、全国11ブロックごとの政党得票率で選出する比例代表(176議席、うち東北13議席)で、465議席を争う。
政権交代後、9年に及んだ自公政権への審判が問われ、新型コロナウイルス対策や経済対策、新政権が掲げた「新しい資本主義」の是非などが争点として挙げられる。本県など東日本大震災被災地ではポスト復興の考え方も注目される。
勝敗ラインを過半数の233議席とする与党に対し、野党は多くの小選挙区で候補者の一本化を進めるなどして選挙戦に臨む。岩手2区も、与野党対決を基軸とした選挙戦が展開されるものとみられる。
県選管によると、19日現在における2区の選挙人名簿登録者数(在外含む)は、37万305人(男17万7924人、女19万2381人)。29年10月の前回選公示日に比べ、2万3442人の減。
このうち、大船渡市は3万274人(男1万4428人、女1万5846人)、陸前高田市は1万6198人(男7802人、女8396人)、住田町は4530人(男2217人、女2313人)。前回選公示日比で大船渡市は2023人、陸前高田市は920人、住田町は517人減った。
きょうから期日前投票
第49回衆議院議員総選挙と最高裁判所裁判官国民審査の期日前投票は、20日から30日(土)までとなる。
気仙の会場と時間は、大船渡市が市役所本庁第1会議室(午前8時30分~午後8時)で、25日(月)からは市役所三陸支所、綾里、吉浜両地域振興出張所(午前8時30分~午後5時15分)も加わる。
陸前高田市は市役所市民交流スペース(午前8時30分~午後8時)、住田町は町役場交流プラザ(午前8時30分~午後8時)。
大林 正英 候補(立・新)
生命と財産を守る
立憲民主党公認の新人で、県内の野党共闘で臨む大林候補は午前11時すぎから釜石市の事務所前で第一声を上げた。同市で平成25年から復興支援員、同27年から市議を務めた経験を踏まえ、「岩手、釜石の皆さまに育てていただいたご恩を返すべく、国政でしっかり働く」と誓った。
8月に出馬表明してから、広い選挙区をくまなく回ったことを紹介し、「『年金を何とかしてくれ』『(福島第一)原発の処理水海洋放出(の政府方針)を何とかしてくれ』と悲痛な叫びを聞いた。皆さまの生命、財産を守ることこそが政治が実現しなければいけないことだ」と力を込めた。
自公政権の政治姿勢への不満の声を受け、「子どもたちに政治を今のまま渡すわけにはいかない。大人の責任で直さなければならない」と訴えた。政権交代実現に向け、「東日本大震災から10年がたったこの先、岩手から政治を変え、日本を救う岩手にする。皆さん一緒にやりましょう」とよく通る大きな声で呼びかけた。
同党県連の横澤高徳、木戸口英司両副代表、豊巻浩也後援会連合会長、共産党県東部地区委員会の深澤寿郎委員長、連合岩手の鈴木圭事務局長が応援マイクを握った。
横澤氏は「地域の一人一人の声を真剣に聞いて国政に届ける、大林候補のような人が必要だ」と太鼓判を押し、木戸口氏は「皆さんの生命と自由と幸福追求のため、大林候補と一緒に仕事させてほしい」と呼びかけた。
荒川 順子 候補(N・新)
素晴らしい日本に
午前8時すぎ、立候補届け出の受付会場に姿を見せた荒川候補。届け出を済ませたあと、明るい選挙のシンボル「白バラ」を胸に付けて報道陣の前で〝演説〟を行った。
自身が〝大目標〟として掲げる「日本人の手で日本を取り戻す」──。これについて「一人ではできない。そのためにNHK党がある。皆さんにも手伝ってほしい。必ず勝って素晴らしい日本にしたい」と述べた。
選挙費用は10万円と明言。「10万円でもできるという見本を見せる」としたうえ、「NHK党はどんな思いでも、政策でも全部受け入れてくれる。若いエネルギーの方、賢い方はたくさんいる。そうした方に集まっていただきたい。一緒に日本を変えていこう」と支持を呼びかけた。
若者や女性と国をつなぐ役目になりたいとの〝小目標〟も掲げる荒川候補。「大目標は皆さんに協力していただかなければならないが、小目標は私一人でもすぐできると考えている。当選したら、まずそれを必ずやる」と語った。
「NHK党」の立花孝志党首はかねてNHKのスクランブル放送化などを訴えており、今選挙戦においても「NHKが受信料の徴収のため、委託法人に行わせている訪問行為は違法だ」と主張。「徹底的に追及していく」とした公約を発表しており、荒川候補もこれに賛同する。
荒川候補は届け出終了後、バスで大船渡市入り。20日には陸前高田市を訪れる予定。
鈴木 俊一 候補(自・前)
コロナ対策に全力
10選を期す鈴木候補は、気仙の支持者らも駆けつけた宮古市宮町の宮古駅前で第一声を上げた。
総括責任者の大井誠治県漁連会長は「志を同じくし、歩みをともにしてきた鈴木候補は何者にも代えがたい大切な政治家」と強調。山本正德宮古市長、同市議会の古舘章秀議長も激励した。
続いてマイクを握った鈴木候補は、五輪・パラリンピック担当相、党総務会長を経て財務相に就いたこの4年を振り返り、支持者に謝意を示した。「恩に報いるためにも古里・岩手県の発展へ国政の場で働かせていただきたい」と呼びかけた。
最大の課題として取り上げたのは、新型コロナウイルス感染症対策。今夏、全国的に拡大した第5波について、「どこにぬかりがあって、どこが後手に回ったのか、しっかり検証し、次に来るかもしれない第6波を最小化するために全力を挙げる」と力を込め、3回目のワクチン接種や経済支援策などの方針を示した。
震災後のハード事業にめどが立った経過を踏まえ、「ソフト事業に力を入れ、真の復興完遂を進めねばならない」と語り、企業誘致や観光振興策にも意欲を示した。
このほかに、自然再生エネルギー開発、事前防災型の国土強靱化対策、農林水産業の振興策なども訴えた。
演説終盤には、友党・公明党への比例代表での支援もアピール。気勢を上げて広い選挙区の遊説へと繰り出した。