藻場再生へのヒント模索 磯焼け対策で潜水モニタリング調査実施 広田湾漁協、高校、企業など連携(別写真あり)
令和3年10月21日付 7面

陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)などは20日、近年深刻となっている海の磯焼け問題への対策を図るため、広田町の大野湾で「地域連携潜水モニタリング調査」を行った。市内の高校や地元企業も加わって海中の藻場を調査。海藻の生息エリアや密度、海藻を食べる生き物などを確認し、豊富な藻場再生へのヒントを模索した。
磯焼けは、海水温の上昇や親潮の勢力低下、海藻を食べるウニの異常発生などが原因とされ、全国的な問題となっている。同漁協でも、餌不足でアワビが成育せず開口を見合わせる地域があることや、実入りの悪いウニが増えるなど影響を受けている。
県が今年3月にまとめた「藻場保全・創造方針」によると、同市の藻場面積は、平成17~23年の年平均が290㌶だったのに対し、令和2年は41㌶と大幅に減少。消失率は県内沿岸市町村で最も高く、抜本的な対策が急務となっている。
こうした中、同漁協では今年3月、「陸前高田市藻場再生活動組織」(代表・鈴木和男同漁協理事)を設置。環境・生態系の維持回復などに資する活動を支援する国の補助事業「水産多面的機能発揮対策事業」を活用し、藻場再生活動の強化を図っている。
この一環で、8月には市内で漁業者によるウニの駆除作業を実施。定点モニタリング調査は、同組織と地元の高田高校(坂本美知治校長)海洋システム科、同漁協から事業委託を受ける㈱橋野潜建(高橋寛信社長、本社・広田町)、市の4者が連携している。
調査場所は、広田町の田の浜、大陽、中沢、米崎町の脇の沢、気仙町の長部の5地区。このうち、20日は田の浜地区で調査を行い、鈴木代表(66)ら組織メンバーと同社の社員、同校の3年生4人と教員ら約20人が参加した。
六ケ浦漁港から小型船4隻で田の浜地区に移動。同社の潜水士2人が水深3、4㍍ほどの場所で藻場の状況を調べ、生えている海藻やウニなどを採取した。
同校の生徒2人と教員も一緒に海に潜って作業を見学。船上では水中ドローンから送られてくる海中の様子や作業中の映像が映され、参加者らが地元の海の環境を確かめた。
同社の潜水士・三浦伸さん(23)は「海藻は思ったよりあると感じたが、以前に比べれば全然ない。もう少し増えてほしい」と説明。同校の武藤圭毅君は「磯焼けは深刻な問題。海藻がこれ以上減らないよう、自分も少しでも役立てることがあればやりたい」と語った。
鈴木代表は「磯焼けの被害は本当にひどく、特に漁業者のボーナスとなるアワビが大ダメージを受けている状態。東日本大震災後からのウニの異常発生を一つの要因と考えるが、明確な原因は分からない。何も対策をしないわけにはいかないので、今後もいろいろ取り組みながら試していきたい」と力を込めた。
11月には海中林の設置作業を予定。来年5月には再び5カ所でモニタリング調査を行い、約半年経過後の変化も見る。