追悼施設 完成来春に 市議会全協で当局説明 「情報館」解体で4カ月延期
令和3年10月21日付 1面

陸前高田市議会の全員協議会は20日開かれ、市が高田町の中心市街地で整備している東日本大震災追悼施設の完成時期について、これまでの計画から4カ月延びて来年3月上旬になると説明した。敷地内にあり、改修予定だったプレハブ造の「復興まちづくり情報館」(休館中)について、景観や維持管理の観点から解体を決めたためで、復興の歩みを伝えるパネルなど同館の展示物については、隣接の市立博物館などに移して展示することとしている。
追悼施設は、陸前高田アムウェイハウスまちの縁側や市立博物館の隣接地で整備が進んでいる。
敷地内にある情報館は鉄骨プレハブ造の平屋構造。平成26年に、市と復興土地区画整理事業を受託したUR都市機構岩手震災復興支援本部陸前高田復興支援事務所、施工の清水JVが設置主体となり、旧・道の駅高田松原(タピック45)敷地内の仮設追悼施設に隣接して設けたもの。
高田松原津波復興祈念公園の整備や国道45号のかさ上げ工事などに伴い、タピックへの立ち入りができなくなったことから、市が追悼施設とともに中心市街地へ移設。震災被害や復興の状況を伝えるパネルなどを展示してきた。
市は、震災犠牲者の追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓の継承を目的として、一体的な再整備に着手。追悼施設のほかに、津波の犠牲になった市民や市内で亡くなった人々のうち遺族の意向を踏まえて1709人の名を記す刻銘板、あずまやなどを置き、情報館は改修する方針で進めてきた。
当初、完成時期は今年7月を目指していたが、新型コロナウイルス感染症の影響も背景に刻銘板用の石材納入に時間を要したため、11月に延期。改修予定だった情報館の撤去を決めたことで、さらに延びることとなった。
同日の全員協議会では、担当の都市計画課が、整備内容に加え、今月下旬から情報館の撤去を始め、完成と供用開始は来年3月上旬になる見通しを示した。
情報館の撤去は耐用年数や景観面を踏まえたもので、撤去後のスペースには舗装や植栽を施す予定という。
戸羽太市長は「追悼施設という厳粛な場所にプレハブの建物があるのはそぐわないという判断も撤去理由の一つ。館内にあるものは非常に貴重であり、博物館にすべて持っていくのは本来の趣旨とは違い、さらには手狭になってしまうということもある。既存の施設の中でどのように展開できるのか、内部で検討している」と説明した。
消防通信指令業務の共同運用方針も
同日の全員協議会では、火災や救急などに際した消防通信指令業務の共同運用にかかる説明もあった。県内の10消防本部で共同運用にかかる枠組みが固まったことによるもので、令和8年の開始を目指す見通しなどが示された。
同業務は、119番通報を受けて消防車や救急車に出動指令を行うもの。県内では国の基本的指針提示を受け、平成18年から12消防本部による共同運用の検討が始まり、震災による休止を挟んで昨年から協議を再開した。
今夏までに大船渡地区消防組合と一関市を除く10本部で協議を進めていくことが決まり、9月には準備組織となる「推進委員会」が設置されていた。共同運用の指令センターなどは盛岡に置く方針。運用にかかる法定協議会設置に向け、地区ごとに議会への提案を進めていくこととしている。
陸前高田市では、11月にも市議会へ共同運用の詳細について報告したのち、定例会に法定協議会規約案を上程する見込み。