2021衆院選岩手2区/鈴木氏 支持広げて先行 大林氏は浸透へ躍起 気仙地区序盤の情勢

▲ 3氏が立候補する岩手2区のポスター掲示板=大船渡市大船渡町

 第49回衆議院議員総選挙は、公示から5日目を迎えた。気仙2市1町を含む岩手2区には、届け出順に、立憲民主党新人の大林正英氏(57)、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」新人の荒川順子氏(68)、自民党前職の鈴木俊一氏(68)が立候補し、与野党対決を軸とした選挙戦が展開されている。気仙では、内閣の主要ポストも務めるなど知名度で優位に立つ鈴木氏が、平成29年の前回選からの支持に厚みを持たせて先行し、新顔となる大林氏が追い上げに向けて浸透を図る。荒川氏は独自の戦いを展開している。

 

荒川氏は独自の戦い

 

 19日に公示され、31日(日)の投開票へ舌戦が繰り広げられている衆院選。小選挙区(289議席)と比例代表(176議席、うち東北13議席)の計465議席を争う中、勝敗ラインを過半数の233議席とする与党に対し、野党は小選挙区で候補者の一本化を進めるなどして臨む。岩手2区も与野党対決が基軸の選挙戦となっている。
 小選挙区の区割り改定で気仙が地盤となってから、2度目の戦いとなる鈴木氏。首相を務めた善幸氏(故人)を父に持ち、自身の閣僚経験、県内で長く続けてきた漁港検診などを通じ、区割り改定以前から気仙での知名度は高い。
 野党候補との一騎打ちとなった前回は、選挙区で約3万票、うち気仙では約3000票差をつけて勝利。国政選挙をめぐっては長く「非自民」が上回ってきた気仙の勢力図に変化をもたらした。
 岸田内閣の中枢ポストに就いて迎える今回。気仙の陣営関係者は「この4年間で、『おらほの先生』と受け取る人が増えたと実感する」と手応えを口にし、前回以上の得票を目指す。
 党支部や前回選後に結成された気仙地区後援会が中心となって動く。農林水産業や建設業をはじめ、各産業に幅広く浸透し、一昨年の参院選や知事選で非自民のスタンスだった層、中選挙区時代から小沢一郎氏を支えてきた層も取り込むなど、支持を広げる。比例東北2議席確保を目指す友党の公明党と連携し、強固な基盤を築くが、陣営では「楽観はしていない」と引き締める。
 釜石市議を辞しての挑戦となった大林氏。出身は東京。同市の復興支援組織での活動経験を持ち、同市を拠点として滝沢、久慈、宮古にも後援会が発足。気仙には設けておらず、小沢一郎県連代表に近い市町議、共闘の一翼を担う共産と社民の支持層、連合気仙を中心に支援を受け、支持拡大を目指す。
 地縁・血縁のない選挙区で、陣営は前哨戦段階から知名度の低さを課題に挙げてきた。気仙でも企業・団体への推薦依頼状送付、はがき配布などを展開。公示後は「野党共闘」と「東京電力福島第一原発処理水の海洋放出反対」の姿勢を強調しながら浸透を図っている。
 一方で、直前まで共闘態勢が固まらなかった影響がおよび、「本格的な動き出しが遅れた」という声が聞かれる。前回選で野党候補を推した層の中には、今回については「静観」「ノータッチ」とするむきもあり、支持は広がりを欠く。
 気仙の陣営幹部は「与野党対決だった(一昨年の)参院選では、知名度の差がありながら統一候補が激戦を制した経緯もある。まだ始まったばかりだ」と、厳しさを認識しつつ追い上げへ躍起だ。
 「日本を復活させたい」と主張する荒川氏は大阪府出身・神奈川県在住で、選挙区内に事務所を置いていない。19〜21日に気仙地区を訪れたが、街頭演説など本格的な選挙運動は行わなかった。以後は期間中に気仙入りする予定はないという。選挙区に足がかりはなく、独自の戦いとなっている。
 県選管によると、19日現在における2区の選挙人名簿登録者数(在外含む)は、37万305人(男17万7924人、女19万2381人)。
 このうち、大船渡市は3万274人(男1万4428人、女1万5846人)、陸前高田市は1万6198人(男7802人、女8396人)、住田町は4530人(男2217人、女2313人)。