「異様な繁茂」危機感強く 外来植物マルバフジバカマ 生育域急拡大に住民警戒

▲ 各地で見られるようになったマルバフジバカマ=三陸町綾里

今秋も白い群生各地で

在来種への影響懸念

 

 大船渡市内で、在来種の生育に影響を及ぼすことなどが懸念されている外来植物のマルバフジバカマが増え続け、地域住民が危機感を強めている。今秋も三陸町綾里や越喜来、赤崎町などで真っ白な花が咲き、「(黄色い花を咲かせる外来種の)セイタカアワダチソウの繁茂を超える勢い」との声も。放置しておくとさらに生育域が拡大するだけに、対策強化が望まれる。

 マルバフジバカマは、北米原産の多年草。住民団体「三陸の山と川と海をみまもる会」の代表で、日本自然保護協会などの会員でもある八幡諗子さん(74)=三陸町越喜来=は「場所によっては、山肌がすべて真っ白になり、遠目には雪が積もったかのような状況に驚いた」と語る。
 八幡代表が町内で初めてマルバフジバカマを目にしたのは平成21年。綾里ダムサイトで、かつて暮らしていた神奈川県で見られる外来種が生息しているのが気になった。翌年再訪し、不動滝周辺でも確認。ダム建設に合わせて、同県内から持ち込まれた芝の中に種が入っていたことが考えられるという。震災後さらに、急速に生息域が拡大した。
 今秋、赤崎町では川の中にも生育し、復興事業で新たに整備された道路ののり面や付近の林内にも繁茂。三陸沿岸道では吉浜にも広がり、国道45号羅生トンネルの越喜来側にも侵入している。住宅地では、側溝の中にも花を咲かせていた。
 三陸町綾里で里山を開放し、自然と触れ合える憩いや体験の場を提供する「大小迫(おおこばさま)つむぎの家」(千田耕基代表)でも、繁茂に危機感を強める。伐採や間伐後の日光が入りやすい斜面などでは、放っておくと高さ1・2㍍ほどの茎がすぐに広がり、群生に。シカも積極的に食べようとしないため増え続け、林道や農地にも白い小さな花が目立つようになった。
 多年草で根も強く、草丈が伸びることで、山菜類をはじめ在来種の成長にも影響を及ぼす。年数回の刈り払い行っているが、追いつかない状況。千田代表は「どこまで自然界を破壊していくのかを考えると、おそろしい」と話し、危機感をあらわにする。
 八幡代表によると、この草を食べた家畜の乳や肉を摂取し続けると、トリメトールという物質によって震えや吐き気といった中毒症状も。死に至る危険性もあるとして、北米では毒草にも指定されているという。
 環境省などによる「生態系被害防止外来種リスト」に指定されてはいるが、気仙での認知度や警戒度は高いとはいえない。
 八幡代表は「岩手では雫石と大船渡に生育し、特に大船渡は異様な状況のようだ。五葉山麓が真っ白な花に覆いつくされないうちに、駆除してもらいたい。知らずに庭で栽培しないように注意喚起も必要ではないか」と力を込める。