ヒツジ飼育「相性は上々」 越喜来の杉若さん 太陽光パネル設置斜面で  

▲ 太陽光パネルを設置した敷地内でヒツジを飼育する杉若さん

 大船渡市三陸町越喜来に生活拠点を構え、「三陸の百姓小屋」として野菜などを出している杉若輝夫さん(79)は、太陽光パネルを設置した斜面でヒツジ2頭を飼い、下草処理の負担軽減を図っている。仲良く周囲を歩き、草を食べる光景は、癒やしの効果も。持続可能な傾斜地活用策として、手ごたえを感じている。

 

下草処理軽減と癒やしに

 

 杉若さんのログハウスは、越喜来湾を望む浪板地内の斜面に構える。今年3月、休耕農地の約1000平方㍍に、太陽光パネル約180枚を設置した。
 安定的に発電するためには、下草の定期的な管理が欠かせない。パネルを並べた敷地の周囲には安全対策上、柵を設ける。
 県畜産試験場(現・県農業研究センター畜産研究所)に20年近く勤務した経験を生かし、杉若さんは「ヒツジとうまく組み合わせることができるのではないか」と考えた。奥州市の農場で食用として飼育されていた、生後5カ月のつがいを安価で譲り受けた。
 9月にやってきたメスは「クロミツ」、オスは「マメダイフク」と、それぞれ孫が名付けたという。「クロ・マメ」ペアは、太陽光パネルの下に設けた〝小屋〟で朝晩を過ごし、日中はパネルの周囲でゆったりと過ごす。草の種類のえり好みもなく、草の高さはどこも、パネルよりも低くなっている。
 鈴を鳴らすと、そばに寄るようにしつけた。
 また、草を食べる場所を1カ所に集中させないため、パネルを設置した台を利用して柵を設け、日によって誘導場所を変える工夫も。杉若さんは「えさを少し用意する程度であまり手がかからず、今は順調。時折鳴く声だったり、姿そのものがかわいらしく、癒やしになる」と話す。
 太陽光パネルでの発電は基本的に全量買い取りとなるが、緊急電源用のコンセントも設けた。杉若さんは住民にとって身近で、管理もしやすい持続可能な「マイソーラー」を提唱する。
 整備費や維持管理費、売電収入などを分析し、地域の将来像を探る。「大窪山で計画されているメガソーラーではなく、地域ごとに『キロ』単位で集めて『メガ』にする考えが大切。地域内には耕作放棄地や未利用地、被災跡地など各所に太陽光発電の候補地が点在している。分割設置によって、電源車のような機能も期待できる。未来を切り開く形になるのでは」と話している。