地域資源の可能性探る 町と岩手大がフォーラム開催 各種研究成果など発表
令和3年11月16日付 1面

住田町と岩手大学が主催する「地域連携フォーラム」は15日、町役場町民ホールで開かれた。同フォーラムは、同大が平成28年度から県内各市町村とともに開催しているもの。この日は大学側が地域と連携したさまざまな事例を示し、出席した町民や企業・団体関係者が相互連携による地域資源活用、地域活性化、産業振興の可能性を探った。
同フォーラムは地域の発展や産業振興を促進するため、同大学が県内全33市町村を対象に展開。住田町では今回が初の開催で、この日は町内外から、来場、オンライン合わせて約40人が参加した。
はじめに、同大学研究支援・産学連携センターの今井潤副センター長が「フォーラムを通じて、住田町との連携がさらに促進されれば」と、町企画財政課の菅野享一課長が「岩手大学と町のつながりを、今後の町の発展につなげていきたい」とあいさつ。
続いて、今井副センター長が地域企業等との共同研究・受託研究の推進、同大学生が取り組む地域課題解決プログラムなどについて説明。同大学釜石キャンパス事務室の田村直司産学官連携専門員が同キャンパス(三陸水産研究センター)が取り組む水産系教育や、加工・マーケティング分野での主な事例を紹介した。
地域連携の活動紹介では、北里大学海洋生命科学部附属三陸臨海教育研究センターの笠井宏朗特任教授、岩手大学農学部森林学科森林保全生態学研究室の松木佐和子講師、同大三陸水産研究センターの齋藤孝信技術補佐員がそれぞれ登壇した。
このうち、松木講師は「住田町におけるカエデ樹液活用の可能性」と題し、同大卒業生の研究成果を発表。地域資源であるカエデ樹液の可能性検討を目的としたこの研究では、樹液採取に適したカエデ資源調査や樹液採取事業に関する聞き取り調査などを展開。採取した樹液で作ったメープルシロップやせっけん、化粧水など、町民による活用事例も取り上げ、「樹液を加工した商品や採取体験などを通して住田の良さを町内外の人に知ってもらうことで、人が集まる」など町内でカエデ樹液事業を行うメリットに言及した。
一方、齋藤技術補佐員は、「気仙川の魅力発掘・発信と地域の活性化」と題して講話。地域活性化のキーワードとして、地元で経済を回す「地産地消」と、町外から来た人に消費してもらう「地産来消」の二つを挙げるとともに、河川利用活性化に取り組む国内の事例を示し、地元の子どもたちを対象とした環境学習や釣り体験、町外への情報発信による交流人口増加など、清流・気仙川を活用した地域活性化策を提案した。
笠井特任教授は「地域産酵母の開発と利用」として、町花にもなっているアツモリソウからの酵母採取の試みなどを発表。このあとの意見交換では、それぞれの発表に関する質問や、町内の資源を活用した商品開発の可能性を巡る質問が挙がった。
出席者はこれらの質疑応問に熱心に耳を傾け、相互連携による取り組み展開のヒントとし、地域活性化に向けての意識を新たにしていた。