SL銀河 再来年春引退へ 客車老朽化で運行終了 上有住駅にも停車 観光面から復興支援けん引

▲ 再来年で運行終了となるSL銀河(写真は8月22日、上有住駅で)

 JR盛岡支社は、釜石線(花巻―釜石間)で運行する「SL銀河」を、令和5年春をもって終了すると発表した。客車が老朽化しており、部品の調達も困難になっていることから運行を終える。東日本大震災後、観光面からの復興支援と地域活性化を後押しし、気仙では住田町の上有住駅にも停車するなど多くの沿線住民に親しまれてきたSL銀河。鉄道ファンからは運行終了を惜しむ声も挙がっており、同支社では新たな観光列車の運行を検討していく。

 

新たな観光列車の検討も

 

 SL銀河は、宮沢賢治の作品「銀河鉄道の夜」をモチーフに改修した機関車と4両編成の旅客車で構成。定員は176人で、平成26年4月にデビューした。
 使用されている機関車は、昭和47年まで山田線、釜石線、大船渡線を中心に運行し、その後は県営運動公園で展示・保存されていたものを復元。旅客車は、JR北海道で客車を改造したものを譲り受けた。急勾配のある釜石線でも運転できるようエンジン付きの客車となっている。
 SL銀河運行開始に当たっては、機関車の復元や旅客車整備、沿線線路の整備や機関士の養成など、総額約20億円を投じた。運行開始以来、主に春から初冬にかけて土日を中心に花巻駅─釜石駅間を運行。これまでにおよそ5万7000人が乗車しており、全国の鉄道ファンたちに愛されている。
 気仙で唯一の停車駅である上有住駅でも、毎年の運行開始時には町や観光関係団体による歓迎行事が催されており、五葉山火縄銃鉄砲隊、町のPRキャラクター・すみっこらによる「おもてなし」が続いてきた。昨年3月には、東京五輪の聖火を東日本大震災の被災地でともす「復興の火」を沿岸部へと運ぶ役目も務めた。
 今年は、車両点検を終えた8月21日に運行を開始。JRグループと東北6県、観光関係団体など実施の東北デスティネーションキャンペーン(東北DC)にちなみ、同日と翌日は「SL銀河東北DC結び号」として、ヘッドマークを東北DC仕様にあしらった車体が、家族連れや鉄道ファンたちを乗せて各駅を巡った。
 同町でも例年同様に運行開始を祝福し、SUMITAチェーンソーアート杣遊会(そまゆうかい、佐藤清司会長)も作品を展示して車両を迎え、多くの乗客が記念撮影などを楽しんだ。
 旅客車は昭和53年製、同55年製のものを組み合わせ、定期検査を行いながら運行してきたが、部品調達が困難となっているために再来年の車両検査前での運行終了を決定した。
 旅客車は廃車とする予定。機関車は当面の間、盛岡の検収庫に置かれ、今後の活用について検討される。
 今年のSL銀河は、12月5日(日)までの土曜日、日曜日に運行。来年は春から初冬、再来年は春のみ運行する。
 同支社では「運行終了まで引き続きSL銀河を活用したさまざまなイベントを計画して盛り上げていく。運行終了後についても、新たな観光列車の運行に向けて検討を進めるとともに、地域の皆さんと一緒に観光振興に取り組んでいきたい」としている。