通信指令業務 共同運用へ 陸前高田含む県内10消防本部 災害対応力強化に期待 8年4月の導入目指す

▲ 陸前高田市消防本部内に設置されている消防指令センター。県内10の消防本部による通信指令業務の共同運用を目指している

 陸前高田市議会の全員協議会は22日開かれ、市当局が同市を含む県内10の消防本部による通信指令業務の共同運用に向けた計画を説明した。各消防本部に置かれている消防指令センター機能を盛岡消防本部に集約し、119番通報を一括して受信、出動指令を出す仕組み。災害時の広域連携強化や大幅な経費削減につながるといい、令和8年4月の導入を目指す。

 

119番 盛岡で一括受信

 

 参加機関は、陸前高田市のほか、花巻市、遠野市、盛岡地区広域消防組合、宮古地区広域行政組合、釜石大槌地区行政事務組合、奥州金ケ崎行政事務組合、北上地区消防組合、二戸地区広域行政事務組合、久慈広域連合の各消防本部。
 運用エリアは参加機関の管轄区域。それぞれの消防指令センター機能を集約し、新たに「いわて消防指令センター(仮称)」を盛岡地区広域消防組合消防本部内に設置する。新システムの導入で、センターが通報者の位置情報、火災、救急の情報を一元的に把握でき、災害対応能力の強化につながる。
 陸前高田市消防本部の試算によると、単独で指令センターを維持する場合、13年に1回程度ある設備の更新費は9億8200万円。共同運用する場合は初期整備費用で7億5300万円を見込み、2億2900万円を削減できるという。
 いわて消防指令センターは43人体制を想定し、各消防本部の職員を配置する。陸前高田市消防本部からは、主任・係長級の消防司令補1人を通年で派遣する見通しとなっている。
 通信指令業務の広域運用は、総務省消防庁が災害の多様化などを踏まえて推進している。本県では平成18年、県内12の全消防本部による検討が始まった。
 東日本大震災が発生し、庁舎が被災した沿岸の消防本部は復旧に合わせて指令センターを整備。これにより、全県での共同運用に向けた協議はいったん休止し、昨年10月に再開。大船渡地区消防組合消防本部と一関市消防本部を除く10消防本部が参加することとなった。
 陸前高田市消防本部の庁舎は、平成26年12月に再建。指令センターは本部内に置かれ、専任の通信指令係1人を配置している。
 同本部によると、10消防本部管内の人口は約105万2100人。昨年1~12月の119番受信件数は5万5000件を超えた。このうち、陸前高田市内の受信件数は1285件で、救急は816件、火災は2件だった。
 来年4月に10消防本部でつくる法定協議会を設置する計画で、陸前高田市当局は12月議会に協議会規約案を提出する予定。指令センターは令和4、5年度に基本設計、実施設計、6、7年度に整備し、8年4月からの共同運用を目指す。
 同本部の戸羽進消防長は「昨今、大規模な災害が国内各地で頻発している。通信指令業務を共同運用できれば、激甚災害が発生し、全国から応援部隊を受け入れる際の体制強化にもつながる。市民の安全・安心のため検討を進めていきたい」と見据える。