国道340号(仮)今泉大橋工区 あす全線で開通 地域結ぶ橋りょうも新設 緊急輸送機能を確保
令和3年11月28日付 1面

平成23年の東日本大震災津波で被災後、県が整備を進めてきた陸前高田市の「一般国道340号(仮称)今泉大橋工区」(気仙町的場~高田町栃ヶ沢、延長2・6㌔)は、29日(月)午前11時に全線開通する。区間内には、気仙町の今泉地区と高田町の高田地区を結ぶ「今泉大橋」(同280・3㍍)を新設したほか、かさ上げなどで津波浸水区域を回避し、災害時における確実な緊急輸送機能を確保した。国道45号や三陸沿岸道路へのアクセスも向上し、地域の観光、産業振興も図られると期待される。
津波浸水域を回避
国道340号は、気仙町的場地内にある国道45号との交差部分を起点に、高田町、竹駒町、横田町を経由し、内陸部に延びる道路。県は震災後、沿岸と内陸を結ぶ復興支援道路に位置づけ、(仮称)今泉大橋工区は「まちづくり連携道路整備事業」として平成24年度に事業着手した。
市によるかさ上げ工事後に、道路をはじめ、誂石橋と姉歯橋の間に新たな橋りょうを整備。震災前と比べて約10㍍の高さに設けることで、10年前と同規模の津波が発生しても通行可能な道路とした。総事業費は約70億3000万円。
全幅員は11・5㍍で、車道は2車線合わせて6・5㍍、路肩1・5㍍、歩道は片側のみで3・5㍍。橋りょうはこれに防護柵部分の1㍍が加わり、全幅員は12・5㍍となる。
令和元年7月には、高田町栃ヶ沢地内の工区終点から320㍍区間と、気仙町的場の起点から960㍍区間が完成し、供用を開始。2年度末までには、同町側でさらに550㍍の整備が進み、合計で1830㍍分が完成した。
また、橋りょうの名称は元年度、地元である高田第一中学校の生徒から募集。寄せられた中から昨年夏、「高田と今泉の両地域や、人々の心を結ぶ存在となるように」との願いが込められた「今泉大橋」に決まった。
今泉大橋を含む770㍍区間は当初、今年3月末の完成、供用開始を予定していた。しかし、同橋が架かる気仙町の気仙川右岸側で地盤改良工事に時間がかかり、全線開通の見通しは今年12月までの9カ月ずれ込んだ。
同橋は4月上旬に完成。その後の工事は天候にも恵まれて順調に進み、1カ月前倒しで全線開通を迎えることとなった。開通に伴う式典は行わない。
全線開通により、「命の道」として災害時などにおける確実な緊急輸送機能が確保でき、国道45号から三陸沿岸道路・陸前高田インターチェンジへのアクセス性も向上する。
来県者が県内沿岸地域に足を運ぶ際のゲートウェイ機能を持つ、高田松原津波復興祈念公園内の東日本大震災津波伝承館や道の駅「高田松原」、周辺観光施設などとの往来もよりスムーズになり、観光振興や交流人口の拡大にも期待がかかる。
県大船渡土木センター道路整備課の古舘衛課長は「この事業のために貴重な土地を提供された地権者の方々や関係機関、施工者に心から感謝している。全線開通によって新たな道路ネットワークが構築され、緊急輸送機能が確保できるとともに、地域の観光や産業の振興に大きく寄与すると思う」と話している。