「オール岩手」で日本酒を、学生団体のi─Sakeが酔仙酒造と商品づくり、来年3月の発売予定(別写真あり)

▲ 酔仙酒造㈱大船渡蔵で金野さん(左から2人目)から日本酒造りを学ぶi─Sakeのメンバーたち

 「若者が日本酒に親しみを持つきっかけづくりを」を目的に活動する県内の学生団体「i─Sake(アイサケ)プロジェクト」(佐藤汐菜代表、メンバー12人)は本年度、陸前高田市の酔仙酒造㈱(金野連代表取締役社長)とオリジナルの日本酒造りを行っている。27、28日には、佐藤代表らメンバーが大船渡市猪川町の同社大船渡蔵を訪ね、自ら栽培した米や県産のこうじなど「オール岩手」の材料を使った仕込み作業を体験。今後も同社と連携して醸造、販売準備を進め、完成した日本酒は来年3月の一般発売を予定している。

 i─Sakeは、若者の日本酒離れがみられる中、そのおいしさや魅力を伝え、親しみを持ってもらおうと、平成30年の秋に結成。日本酒好きはもちろん、農業や発酵に興味がある学生も参加している。
 メンバーらは県内の酒蔵巡りをはじめ、盛岡市内の水田を借り受け、地元農家の協力を受けながら酒米を栽培。この米や県産のこうじ、酵母、水を用い、県内の酒蔵と共同でオリジナルの日本酒を醸造し、「RondoIwate(ロンドイワテ)」の銘柄で販売している。
 ロンドイワテは、第1弾を紫波町の㈲月の輪酒造店、第2弾を同市の菊の司酒造㈱と製造し、商品はいずれも完売。第3弾は「沿岸部の酒蔵を知ってもらう機会をつくりたい」と、昨年、酒蔵巡りで足を運んだ酔仙酒造に協力を依頼。同社も快諾し、今春からプロジェクトを進めている。
 酒造りは、学生らの手で原料となる酒造好適米「吟ぎんが」の苗を育てるところからスタート。5月には、その苗を同社の社員らとともに水田に植えた。
 10月には学生たちが稲刈りを行い、玄米で約550㌔を収穫。今年は昨年に比べて収量は少なかったものの、初めて等級検査で1級に認められる良質な米になったという。これを55%精米した約300㌔分と、酔仙の酒に使われる氷上山の伏流水、岩手生まれのこうじ、酵母を使って純米吟醸酒を仕込む。
 2日間にわたる大船渡蔵での仕込み作業には、佐藤代表(20)=岩手大学農学部3年=や谷崎公紀前代表(22)=同大学人文社会科学部4年=らメンバー計7人が参加。同社の杜氏(とうじ)・金野泰明さん(45)らの指導のもと、蒸した米を適温まで冷まし、こうじと水が入ったタンクに入れる「添仕込み」と、洗米の作業などを体験した。
 学生たちは「作業は楽しかった」「全くかかわってこなかった分野なので、すごく勉強になる」と充実した表情を見せ、酒造りの一端を理解。今後の販売に向け、気仙の酒販店回りも行った。
 佐藤代表は「米に触れての作業は初めてで、とても楽しかった」と話し、「自分のお酒を造るという体験はなかなかできない。情報発信を通じてi─Sakeや酔仙さんに対する学生の関心も高まっており、より知ってもらいたい。目指すのはすっきりと甘く、フルーティーな日本酒。学生が行くような居酒屋で提供したり、皆さんが手にとってもらえるものを造っていきたい」と意気込んだ。
 金野さんは「学生と商品をつくるのはこちらとしても初めて。2日間一緒に作業をしただけでも、学生たちの考えなどを知り、こちらも勉強になっている。われわれも新しい試みを楽しみながら、取り組んでいきたい」と話していた。
 酒造りは今後、もろみの発酵が終わる来月下旬にしぼりの作業を行い、加熱殺菌、瓶詰めなどを経て来年3月に「ロンドイワテ2022」(1瓶720㍉㍑入り)として販売する計画。酒造りなどの様子は、SNSなどを通じて随時発信していく。