養殖と水耕栽培を同時展開 浄化センターの未利用地でチョウザメ育成やレタス生産 合弁会社が来年10月に事業開始
令和3年12月4日付 7面

大船渡市大船渡町にある大船渡浄化センターの未利用地で、同センターの包括運営事業に参画する企業などが立ち上げた合弁会社㈱テツゲン・メタウォーター・アクアアグリ(佐藤直文代表取締役)が、チョウザメ養殖やレタスの水耕栽培を同時に行う「アクアポニックス」を展開する。市と事業体が土地の借地契約を結び、現在は鉄骨造りの温室整備が進む。来年10月の事業開始を見据え、売上高は年間最大で1億5000万円程度を見込む。
浄化センターは、家庭や工場などでの排出水が下水管を通じて集まる終末処理場。浄化し、大船渡湾に放流している。
継続、計画的な運営に向け、公民連携手法を採用。現在、特別目的会社である大船渡下水道マネジメント㈱が浄化センターの施設改良付包括運営事業を実施している。
これまでに既存施設の改良で処理能力の増強を進めた結果、将来的に予定していた処理系列の増設が不要となった。こうした中、市は同マネジメントから、未利用地の活用で提案を受けた。
アクアポニックスは「アクアカルチャー(養殖)」と「ハイドロポニックス(水耕栽培)」を組み合わせ、魚と植物を同じシステムで同時に育てる新しい農法。魚の排泄物を水中のバクテリアが植物の栄養素に分解し、植物はろ過フィルターの役割を果たすことで浄化された水が魚を育成する水槽に戻る循環システムを形成する。
現在ある浄化センターの管理棟や水処理施設の西側に、鉄骨造りのビニール温室約2000平方㍍を整備。水槽を設ける養殖エリアでは、チョウザメを育成する。卵はキャビアの加工に用いられるほか、身も引き合いが多く、付加価値をつけやすいという。
栽培エリアでは、比較的育てやすいレタスから着手。その後は、付加価値の高い野菜栽培を見据える。
10月に設立された合弁会社は、大船渡下水道マネジメントの代表となっている㈱テツゲン=本社・東京都=とメタウォーター㈱=同=に加え、新潟県長岡市でアクアポニックスの実績を持つ㈱プラントフォームで構成。市とはすでに、借地契約を結んだ。
生産品の販売先はスーパーや宿泊施設などで、年間売上高は4000万円〜1億5000万円を想定。8〜10人程度の雇用を見込む。事業開始は来年10月初旬を見据える。
メタウォーター㈱事業戦略本部事業企画部の稲垣雄一郎担当課長は「地域の連携に主眼を置いている。下水道だけでなく、産業振興の中でも共生し、市の創造的な発展につながれば」と語る。
市下水道事業所では「循環型有機農業との連携による下水処理場の資源活用と地域貢献ができる事業であり、国内では最初の事例。借地料や納税収入だけでなく、地元住民の雇用や生産物の販売による市内経済の活性化、施設見学によるコミュニティーの場としての可能性も持っている」と期待を込める。