東日本大震災10年/つながり これからも 後方支援に感謝寄せる 仮設入居者全退去で クロージングセレモニー(別写真あり)

▲ 中上団地近くで行われたセレモニー

 住田町は4日、応急仮設住宅クロージングセレモニーを下有住の応急仮設住宅中上団地近くで開催した。町内には震災後、3団地に計93戸の木造仮設住宅が建設され、被災者を受け入れてきた。昨年7月をもって入居者は全員が仮設から〝卒業〟。セレモニーでは、2市1町や支援団体、町内公民館長、元入居者らが出席。町の後方支援に感謝を示すとともに震災後に生まれたつながりを再確認し、末永く交流が続くことを願った。

 

お別れ交流会も開催

 

下有住地区公民館で行われた交流会

 セレモニーは、新型コロナウイルス感染症予防のために最小限の人数で開催し、約20人が出席。YouTubeの住田町広報チャンネルでも配信し、多くの関係者へと様子を届けた。
 セレモニーでは、神田謙一町長が「まもなく震災から10年9カ月。すべての入居者は昨年退去した。仮設住宅は、全国各地から熱い支援の集まる場所となった。復興支援を通じて訪れた人が再び来町し、住民との交流が続いていけばうれしい」とあいさつ。戸羽太陸前高田市長は被災者の受け入れや後方支援を担った住田に感謝を伝え、瀧本正德町議会議長、多田欣一前町長も、町の取り組みに対する多方面からの支援に謝意を示した。
 支援団体を代表し、住田の仮設住宅建設に関してさまざまな支援を展開した一般社団法人・モア・トゥリーズの水谷伸吉事務局長は「あれから10年が過ぎ、仮設も一つの役割を終えたが、森林保全団体として、今後もますます住田と関わりを持ちたいと思っている」と述べた。
 セレモニー終了後、隣接する下有住地区公民館では、震災を機に発足し、コミュニティーづくりなどに尽力した一般社団法人邑サポート(奈良朋彦代表)による「お別れ交流会」が開かれた。仮設生活を写真で振り返ったほか、支援者、入居者らが思い出を語らい、再会を喜ぶとともに、培ったつながりの継続を誓い合った。
 出席者のうち、陸前高田市気仙町で被災し、火石団地で8年9カ月間生活した平野茂さん(78)は、同団地では自治会長も務めた。「見ず知らずの人たちが1カ所に集まって生活したのだから大変なこともあった」としながらも、「草刈りなど共同作業を行う中で次第に打ち解けていったし、地域の人たちが関わってくれたことも助かった」と振り返った。
 町は震災発生から3日後、避難所生活を送る気仙両市の被災者のため、いち早く木造仮設住宅の建設に踏み切った。仮設住宅の建設地は、町営住宅の跡地、旧住田幼稚園の跡地、旧下有住小学校校庭の3カ所を選定。町営住宅の跡地には火石団地として13戸、旧住田幼稚園跡地には本町団地として17戸、旧下有住小学校校庭には中上団地として63戸の仮設住宅が、4月から5月にかけて完成していった。
 同町の仮設住宅では、隣接する公民館や地域住民、NPO、ボランティアも定期的なイベント開催や居場所づくりなど、コミュニティーを支える活動を行ってきた。
 入居世帯はピーク時には91世帯だったが、発災から4年後の27年3月には43世帯と半数以下になった。その後は28年3月に33世帯、29年3月に24世帯、30年3月に19世帯、31年3月に16世帯と年々減少していき、昨年7月をもって全世帯が退去した。